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【大学野球】“無双状態”の明大・浅利太門 来秋ドラフトの中心となる可能性を秘めた右腕

 

続投で1点リードを守り切る


明大の154キロ右腕・浅利は慶大2回戦を終えて、10回1/3を無失点と、抑えとして快投を続けている[写真=矢野寿明]


[東京六大学秋季リーグ戦第6週]
10月15日(神宮)
明大1−0慶大(1勝1敗)

 8回を終えて明大が1対0とリード。しびれる展開だった。明大は慶大1回戦(10月14日)を落としており、田中武宏監督は「連敗というのは、天皇杯が遠のきますので」と、2回戦(同15日)で必勝態勢を敷いていた。

 この日は朝からの雨が予想されたため、前日のうちに、第1試合の開始が1時間遅れた。しかし、当日は降りやまず、さらに30分遅れの12時30分プレーボール。第2試合に組まれた明大−慶大2回戦は15時40分開始で、3回表の16時10分には点灯していた。コンディションづくりが、難しい試合だった。

 9回表、最後の守りを控えて、采配の分岐点を迎えた。先発の蒔田稔(4年・九州学院高)が5回途中無失点と粘り、二番手の左腕・久野悠斗(2年・報徳学園高)が6回まで踏ん張った。そして、7回表からが三番手で、右腕・浅利太門(3年・興國高)がリリーフし、2イニングを抑えた。ブルペンには4年生左腕・石原勇輝(広陵高)がいつでも行ける状態にあった。田中監督は9回の頭からスイッチする腹積もりでいたが、正捕手・小島大河(2年・東海大相模高)に最終確認した。

「小島が『浅利で行かせてください』と。受けている捕手が一番、分かる。小島は早大1回戦で頭の中がこんがらかって、(2、3回戦を)休ませて、(4年生の副将である)菅原(謙伸、4年・花咲徳栄高)のリードを見させた。(次カードの立大戦以降は)迷いなく、サインが出せている。日に日に信頼感が増し、(2試合の欠場が)彼にとって生きている」

 背番号2を着ける小島の進言により、浅利は続投した。9回表は二死から四球を出したものの、落ち着いて次打者を抑えた。3回2安打無失点で、1点リードを守り切ったのだ。

 早大3回戦でも同じようなシーンがあった。浅利は2対0の7回裏からリリーフ。当初は2イニングの予定であったが、4年生捕手・菅原が「行けます」と田中監督に伝え、浅利は9回裏を無失点に抑えている。

角度のある真っすぐが魅力


 浅利はこの秋「無双状態」にある。4試合で救援して打者37人に対して被安打3。10回1/3で無失点(防御率0.00)、9奪三振と圧倒的なピッチングを見せている。

 試合後、堀井監督は浅利の投球について「身長(186センチ)、角度がある。あの角度からの変化球、ボール球を振ってしまう。力感なく投げてくるので、打者はアジャストしにくい」と振り返った。

 真上から振り下ろすストレートは、最速154キロ。慶大2回戦での最速は147キロ、アベレージは140キロ中盤も、慶大打線は差し込まれる。その理由は、俗に言うボールのキレにある。NPBでも平均2200回転と言われる中で、浅利は好調時にはMAX2650回転で平均2550回転という驚愕の数字をたたき出す。

 追い込んでからは130キロ台中盤のスプリットチェンジが威力を発揮。DeNAバウアーを参考に、落とすのではなく、タイミングを外す意図を込める。真っすぐと同じ腕の振りで投じられるから、打者のバットは空を切る。オリックス山崎颯一郎の投球スタイルにあこがれ「リリースが高く、人とは角度が違う」という唯一無二の武器を磨いている。

 投球の軸は真っすぐ。見ていても気持ち良い。

「自分が出てきてストレートを投げるのは、相手チームも分かっていること。だからと言って、全球、変化球でいけるピッチャーではありません。打者が張っても、打てないような真っすぐを投げていきたいと思います。上でやっていくには、NPBでも普通に160キロが出ている。自分も目指していきたい」

 プロを目指す上で、最終学年を前にアピールが必要だと考えている。

「3年秋なので、結果が求められる。ヘマをしないように首脳陣、チームから信頼を失わないようにしていきたい。4年生3人が試合を作ってくれる。そのバトンをつなぐのが自分に求められる役割。ピッチャーの力が勝敗を左右する。最後を締められるようにしたい」

 明大は85年ぶりの東京六大学リーグ4連覇を目指す上で、勝ち点をかけた慶大3回戦は大一番である。先発はエース右腕・村田賢一(4年・春日部共栄高)が予想され、終盤の勝負どころでは、浅利が投入されるはずだ。

 あるNPBスカウトは浅利について「あの角度は魅力。来年の中心になるかもしれない」と評価し、細部までチェックを継続している。将来性高い大型右腕に対して、MLBスカウトも熱視線を送っているという。浅利は「1位で競合されるように頑張りたい」と語る。

 2024年のスカウト戦線は、明大の遊撃手・宗山塁(3年・広陵高)が早くも「ドラフト1位の超目玉」と言われているが、チームメートの浅利も見逃せない存在となりそうだ。

文=岡本朋祐
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