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【大学野球】初出場、初打席、初スイングで初安打、初適時打 野球人生が1日で大きく変わった早大・田村康介

 

9試合目でめぐってきたチャンス


早大の2年生・田村はリーグ戦初打席で先制の2点適時二塁打を放った[写真=矢野寿明]


[東京六大学秋季リーグ戦第6週]
10月15日(神宮)
早大10−1法大(早大2勝)

 リーグ戦初のベンチ入りで初出場、代打で初打席、ファーストスイングで、初安打(左翼線二塁打)が、初適時打である。

 早大・田村康介(2年・早大学院)が法大2回戦の4回表二死一、二塁から先制2点タイムリー。この一打で早大が主導権を握り、10対1で連勝し、今季3つ目の勝ち点を挙げた。

「真ん中低めの真っすぐ。代打の初球を、どんな球でも振ろうと決めていました。ちょっと(バットの)先っぽでしたが、ヒットコースに飛んでくれました。一目散に走りました。信じられなくて……。ついこないだまで(スタンドで)応援していた身なので……。今日、初めてベンチ入りして、勝利に貢献できた達成感からガッツポーズが出てしまいました」

 中学時代に在籍した東練馬シニアでは「二番・遊撃」でジャイアンツカップ準優勝。早大学院では1年夏から「五番・三塁」のレギュラーで、3年時は主将で「四番・遊撃」を務めた。高校通算20本塁打の右スラッガーだ。

 早大では2年春のフレッシュトーナメントで三番、一番、五番を任され、3試合で11打数5安打1打点と結果を残した。夏場は新潟で開催された「次世代育成大学野球サマーリーグ」で存在感を示し、その後の南魚沼キャンプに参加し、Aチームで力を磨いてきた。

 今秋も開幕から4カードで30人ほどのベンチ入り候補に入っていた。カード前日の金曜日には背番号39のユニフォームを手渡されていたが、25人の登録選手はボーダーラインでメンバー漏れ。今季9試合目でめぐってきたチャンスで、初もの尽くしの活躍である。

「(昨日)自宅で(2回戦の)メンバーをLINEで知らされて……。高校から早稲田で野球をやりたいと、早大学院に入ったんです。その目標がかなうことができて、気合が入った」

 4回表の好機で、三塁ベンチでやり取りがあった。早大・小宮山悟監督は明かす。

「勝負をかけるかどうか? というところで、金森さん(金森栄治、助監督、元西武ほか)が背中を押してくれた。(練習では)マンツーマンで鍛えている。一振りにかけた価値があった。思い切りの良さがすべて。足がすくむような場面でも『初球から振ってやろう』と、自然にできるのはたくましい」

2020年秋以来の優勝へ望み


二塁上では喜びを爆発。1回戦はスタンドでの応援組だったが、2回戦ではヒーロー。1日で世界が様変わりした[写真=矢野寿明]


 早大は東大との開幕カードで連勝も、明大戦を1勝2敗で落とした。立大、法大の2カードをともに連勝で、7勝2敗、勝ち点3として、2020年秋以来の優勝へ望みをつないだ。

 残るは最終週の早慶戦である。田村は意気込みを語った。

「ポッと出の選手なんですけど、優勝争いで力を発揮するチャンスなので、そのチャンスを、自分の力でもぎ取りたいと思います」

 初出場で初打席の初球を、迷いなくバットを振れるのは、並大抵の精神力ではない。立大1回戦では篠原優(4年)が土壇場の9回に同点打、昨秋からレギュラーとして出場する二番・二塁の山縣秀(3年)は、法大2回戦で2安打。田村と同級生である椎名丈(2年)も今春から代走要員として出場機会を得るなど、早大学院出身者が元気である。

「(2020年)に4年生だった柴田(柴田迅)さんから時代をつないできて、篠原さん、山縣さんと頼もしい先輩がいるので、自分も背中を押されている。早大学院として、良い流れをつないでいきたいと思います」

 この日の試合後、指名選手に呼ばれたのも、もちろん初めて。校歌、応援歌を歌っていた前日の一塁応援席から一転して、田村の野球人生は1日で大きく変わった。

文=岡本朋祐
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