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【大学野球】注目された勝利投手の扱いは…5回裏のピンチを切り抜け最高のご褒美を手にした立大・渡部太陽

 

通算10試合目でリーグ戦初勝利


立大の4年生左腕・渡部は東大1回戦で救援勝利。学生ラストシーズンでリーグ戦初勝利を手にした[写真=矢野寿明]


[東京六大学秋季リーグ戦第7週]
10月21日(神宮)
立大9−2東大(立大1勝)

 先発投手の勝利投手の権利は原則、味方がリードし、5回を投げ切って得られる。東大1回戦で先発した立大・池田陽佑(4年・智弁和歌山高)は5回裏一死二、三塁で降板した(この時点で4対1)。人差し指のマメがつぶれるアクシデントによる、無念の交代だった。

 二番手で救援したのは左腕・渡部太陽(4年・春日部共栄高)だ。先頭打者の一ゴロで三塁走者の生還を許したが、二死三塁から三番・別府洸太朗(4年・東筑高)を二ゴロに仕留め、勢いづく東大に流れを渡さなかった。

 立大は6回表、渡部に代打を出したため、9球のショートリリーフで役目を終えた。立大は6回以降、3投手が2イニング、1イニング、1イニングを無失点でつなぐ。安藤碧(4年・明石商高)のリーグ戦初本塁打に続く2本塁打など15安打で、9対2と先勝した。

 そこで注目されたのが、勝利投手の扱いである。公式記録員の判断により、イニング数で決定することもあるが、5回裏のピンチを切り抜けた渡部が勝利投手となった。4年秋、通算10試合目でリーグ戦初勝利である。

 立大は今秋、開幕から4カード連続で勝ち点を落とし、8連敗で東大戦を迎えていた。勝ち点0同士の直接対決。チームとしても、今季初勝利。渡部は正直な思いを口にしている。

「勝利投手というのは、考えていませんでした。(救援の場面は)アップアップしがちなので、落ち着いていこうと思っていました。狙いを定めて、捕手のミットをめがけて投げる。向こうの応援がすごかったので、流れをいかせないようにしました」

 そして、渡部の人柄を示すコメントを残した。

「チームとして1勝目。(エースである)池田が先発したので、池田につけさせてあげたかった。池田が頑張っていたので、申し訳ない。ただ、池田が先発した試合で勝てたのは良かった。試合に出ている4年生は少ないですが、4年生としての責任感がある。チームで勝とうと言ってきた中で、4年生が中心に頑張って、1勝できたのは大きいです」

4年春にリーグ戦デビューの苦労人


立大は今季、9試合目で初勝利。リーグ戦初本塁打に続き、1試合2本塁打の安藤碧[明石商高、左]と渡部[右]と4年生2人が殊勲者となった[写真=矢野寿明]


 渡部は中学時代に侍ジャパンU-15代表でプレーした逸材だった。春日部共栄高では、3年夏の北埼玉大会初戦(2回戦)敗退。「野手で入っていました」と、背番号13を着け、代打1打席(1打数無安打)で最後の夏を終えている。「東京六大学で野球がしたい」と、1浪を経て、一般入試で立大に入学した。

 高校で1学年後輩の明大の右腕エース・村田賢一(4年・春日部共栄高)は、大学で同学年となった。今春までリーグ3連覇に貢献した後輩はリーグ戦通算15勝(3敗)。「村田に負けないように、切磋琢磨してきました」。4年春にリーグ戦デビューの苦労人。今春から中継ぎ、ワンポイントでブルペン待機し7試合に登板し、ベンチの信頼をつかんでいった。

 木村泰雄監督代行は「これまではリリーフで白星がつくチャンスがありませんでしたが、良いところで良い結果を出し、白星がついて良かったです」と笑顔を見せた。渡部は「夢にも思わなかった……」と、あらためて勝利投手の喜びをかみ締めた。競技者としてプレーするのはこの秋が最後。大学4年間の努力の末、神宮で最高のご褒美を手にした。

文=岡本朋祐
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