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【大学野球】最下位に終わり涙した東大の元甲子園球児 負けから学んだ「『最下位脱出』を目標にするのは難しい」

 

フルスイングで空振り三振


東大の主将・梅林[左]と別府[右]。高校時代に甲子園出場経験のある4年生2人は、東京六大学でのプレーを終えた[写真=BBM]


[東京六大学秋季リーグ戦第7週]
10月22日(神宮)
立大4−2東大(立大2勝)

 2点を追う9回表。三塁側の東大応援席は、イニング頭から応援歌『闘魂は』がエンドレスで流れた。一死走者なしから代打に告げられたのは主将・梅林浩大(4年・静岡高)。

 ラストシーズンの今秋はベンチを温めることがほとんど。出場は法大2回戦での守りのみ。この試合が、今季初打席だった。

「大久保助監督は、チームに勢いをもたらすために起用してくれたと思うので、その期待に応えたかった」

 1ボール2ストライクからの4球目、147キロをフルスイングも、空振り三振に終わった。

「振って終わろうと思った。結果は出ませんでしたが、自分のできることはできました」

 次打者も凡退して、東大は2対4で連敗した。立大とは、勝ち点ゼロ同士の直接対決。2勝(勝ち点)を挙げれば、1998年春から続く51季連続最下位から脱出できたが、勝負の世界は厳しかった。梅林は無念を口にした。

「2年秋、3年秋に続いて『3度目の正直』の思いが強かった。投手もいるし、打線も元気。それでも勝ち切れなかったのは悔しい」

 梅林はこの1年間を問われると「大変でした……」と涙をこらえることができなかった。梅林は静岡高で3年春のセンバツ甲子園を経験し、1年の浪人を経て東大に入学した。

 そこで味わったのが東大野球部に染みついた「文化」だった。難関入試を経てきただけに、自身と向き合うことに得意な一方で、組織力の物足りなさを感じていたのである。この1年、チーム力強化をテーマに取り組んだ。

「(この秋の法大2回戦での)1勝では、満足できない。成果を上げたとは言えない」と、結果については厳しい口調も、その過程においては成果を感じる部分があったという。

「ゲームに出ているメンバー、出ていないメンバーも一丸となって、チーム全体で勝利へと向かうことができた」

シーズン自己最多の9安打


 横にいた三番・中堅の別府洸太朗(4年・東筑高)も甲子園経験者だ。2年の浪人を経て東大に入学。立大2回戦では2安打を放ち、シーズン自己最多の9安打。3年春からレギュラーに定着し、キャリアハイの打率.237を残した。特に終盤2カードは19打数6安打と「気持ちだけでやっていた」と、4年生としての意地を見せた。通算54試合で32安打。

「この1年、梅林が良い組織をつくってくれた。もっと勝たせたかった。悔しいです」

 別府は大粒の涙を流し「東大に来て良かったです。やり切ったのはある」と振り返った。

 負けから何を学ぶのか。梅林はすぐに52季連続最下位の原因と、次なる課題を明かした。

「『最下位脱出』を目標にするのは、難しいんです。六大学の中で、5番目にならないといけない。漠然としていたと思います。この秋は結果的に、立教さんと5位を争う展開となりましたが、(事前に)ターゲットの明確さを持たせたかった。『この大学を超える練習をしよう!』とより具体的になれば、練習からもっと厳しくできた。後輩に反省として、伝えていきたいです」

 東大は2023年、井手峻監督が病気療養中のため、大久保裕助監督が監督代行として、春と秋のシーズンを指揮した。「選手たちはよく、ついてきてくれた。持っている力は発揮できたと思います。選手たちには、感謝したいです」と語ると、目頭を熱くさせた。

 2020年4月、38年ぶりに元甲子園球児として入部した2人。入学後はコロナ禍で活動もままならない時期もあったが、梅林は組織力アップを実現させ、別府は持ち前の明るさで戦う姿勢を残した。「最下位脱出」をどう受け止めていくか。後輩たちの挑戦は続いていく。

文=岡本朋祐
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