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【大学野球】4季ぶり40度目の天皇杯奪還を果たした慶大 ベンチに用意された3枚の「秘密兵器」

 

効果抜群だった「ボード」


慶大の関チーフコーチ[右]と副将・小川[左]はお手製のボードで士気を高めた[写真=矢野寿明]


[東京六大学秋季リーグ戦第8週]
10月30日(神宮)
慶大5-3早大(慶大2勝1敗)

 早慶戦は応援部のステージほかの運営上、東京六大学リーグ戦で唯一、ベンチが固定されている。勝ち点(2勝先勝)での優勝がかかった、伝統の定期戦。慶大の三塁ベンチには、3枚の「秘密兵器」が用意されていた。

 1勝1敗で迎えた3回戦の最終決戦を前に、声をからしていた考案者・関展里チーフコーチ(4年・慶應義塾高)は教えてくれた。

「堀井(哲也)監督は常々『良い顔して野球をやろう』という話をします。それが、チームとしてのテーマでもある。多くの観衆が入る早慶戦では、ベンチからの声がグラウンドに届かない。そこで『良い顔して野球をやろうボード』を制作することになったんです」

 従来から外野手のポジションを指示する、例えば、左翼手の「7」「→」「←」などのボードに、新たに「笑顔」の絵文字が加わった。ベンチのスペースの都合上、2枚が実働した。

 1勝1敗の3回戦で先制2ランを放った主将・廣瀬隆太(4年・慶應義塾高)は「ピンチの場面で、あの笑顔を見ると、気持ちが高まりました」と感謝した。慶大は1回戦で早大に先勝を許してから2、3回戦で連勝、2勝1敗で、勝ち点5の完全優勝を飾った。

 ムードメーカーの副将・小川尚人(4年・三重高)は明かす。

「自分は『良い顔して野球をやろう&ありがとう要員』なんですが、マネジャー総動員でつくってくれたボードは、効果抜群でした」

「ありがとう」とは、選手たちを鼓舞するかけ声だ。攻守交代時などに使用し、メンタルを安定に導く、前向きな言葉である。

 今年の4年生はコロナ禍になった2020年入学組。さまざまな困難を乗り越え今春、通常のリーグ戦運営に戻った。そして、優勝のかかった早慶戦には3試合で2万7000人、2万8000人、1万8000人の観衆。両校による激しく、華やかな応援合戦が繰り広げられ、神宮球場は本来の熱狂が完全に戻った。大歓声があるからこそ、学生たちは躍動できる。

 今秋のリーグ戦は、最終37試合目で優勝が決まった。最後の1球まで、全力を傾けた全力プレー。慶大が4季ぶり40度目の天皇杯奪還。6校の絆は固い。「対校戦」を終えた閉会式では、6校の選手たちに、スタンドの熱心なファンからは惜しみない拍手が送られた。勝負が終われば「一生の仲間」なのである。

文=岡本朋祐
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