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【高校野球】2000年以来のセンバツ出場に王手 創価高・堀内尊法監督が就任2カ月で好成績を残す2つの理由

 

生徒の前で「甲子園」を口にしない


創価高・堀内監督は就任2カ月で、東京大会決勝へと導いた[写真=桜井ひとし]


[秋季東京大会準決勝]
11月4日(神宮)
創価高7-0日大二(7回コールド)

 創価高が日大二高との準決勝を7対0の7回コールドで制し、24年ぶりの決勝進出を決めた。来春のセンバツ甲子園への資料となる東京大会。「関東・東京」の一般選考枠は「6」。関東4、東京1が基数であり、残り1枠を関東5位校と東京2位校で争う。つまり、東京大会優勝校が「当確」で事実上、創価高は2000年以来のセンバツ出場へ王手をかけたのだ。

 9月1日に就任した創価高・堀内尊法監督は「甲子園」を、生徒の前で口にすることはないという。

阪神の『アレ』ではないですが『うまくなろう』としか言わないんです。準々決勝を勝ち上がった際にも『うまくなって、ベスト4へ行こう』と。準決勝前も『決勝まで行けるチームになろう』と。(決勝に向けても)明日勝って、東京1位になろう、と。『甲子園』とは力むので、使わないです」

 なぜ、就任2カ月で好成績を残すことができたのか。理由は2つある。

 まずは、堀内監督の豊富なキャリアだ。松山商高(愛媛)では1986年夏の甲子園で準優勝。高校日本代表でプレーし、主将を務めた創価大では全日本大学選手権4強に進出した。日米大学選手権では日の丸を背負っている。大学卒業後は約30年にわたり創価大・岸雅司元監督をコーチとして支え、2020年12月から22年春まで監督を歴任した。その後は大学職員として就職部に勤務し、学生の進路のために尽力。そして、今回、学園内の人事で高校野球部の監督に就任する運びとなった。

「何もなくて、2カ月では無理(苦笑)。高校野球の経験と、岸監督の下でやらせていただいた経験が、根底にあります。周囲の皆さんのおかげで(監督という)立場をいただきました。自分自身も日々、精進しています」

 練習における指揮官のルーティンは、グラウンド周辺の環境整備。「草むしりをしています。いろいろな草取り道具を駆使しています(笑)」。創価大・岸元監督も毎朝、枝葉を拾って、常に整理整頓に努めていた。「環境が乱れると、心が乱れる」。恩師の教えを継承する。

 試合前日には、部員全員で掃除をする。

「『これをやるぞ!』と、こちらから決め事を合図すると、生徒たちは一斉に動く。教えたことを、スポンジのように吸収する素直さ、純粋さがある。もちろん、大学生は大学生としての素直さ、純粋さを持っていました」

選手に過度の重圧は与えない


 実力伯仲の東京で、すぐに好結果をもたらせた2つ目の要因は「生徒優先」である。

「練習では細かいことを指示しますが、試合では生徒の実力を引き出すのが監督の役割です。ゲームではムダな考えをさせないようにしています。作戦面も急にはできませんので、1試合、1個ずつ増やしている段階です。野球は確率のスポーツ。球場の条件、相手さんを見て(先発メンバーも)決めています」

 先発した左腕・森山秀敏(2年)は6回無失点とゲームメークして、期待に応えた。

「神宮のマウンドの硬さに、合っていると思ったんです。右足を踏み出した際に、壁ができる。立ち上がりのリズムが良かった。(試合前日までの)準備力も素晴らしかったです」

 堀内監督が高校野球で最も恐れるのは「ビッグイニング」。1プレーが勝敗を左右するからだ。創価高は5回終了で6対0とリードも、グラウンド整備の際に「このままでは、分からんぞ。今から2試合目のスタートだ、とゲキを飛ばしました。守りのピンチになっても、高校野球はマウンドへ行けません。(伝令では)私から生徒に伝えて、生徒から生徒への指示になるから、難しいんです」。生徒たちの胸中を察して、的確なアドバイスに努めている。

 センバツまであと1勝。堀内監督は「甲子園は『行かないといけない場所』でなく、『実際に行ったら、良いところだぞ』という話はしています」と明かす。過度な重圧を与えない。試合後の取材も終始、リラックスモード。堀内監督の温厚な人柄が選手にも伝播している。

 無欲でありながらも、勝利への執念を持ち続ける。つまり、先を見ず、目の前の1球に集中する。その積み重ねが、結果として表れる。

「(神宮も)ウチの東大和のグラウンドやぞ。背伸びをするな」

 大舞台で、練習以上のパフォーマンスは発揮できない。堀内監督は取り組んできた成果を出させることに専念させる。

文=岡本朋祐
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