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【大学野球】圧巻の勝負強さを見せる慶大・廣瀬隆太 「エンジョイ・ベースボール」で飾る有終の美

 

プレッシャーとは無縁


慶大・廣瀬は1点を追う6回裏に逆転3ランを放った[写真=矢野寿明]


[明治神宮大会大学の部・準決勝]
11月19日(神宮)
慶大5-1日体大

 タイトル4冠の難しさを、肌で知っている。慶大の主将・廣瀬隆太(4年・慶應義塾高)は「気持ち的には、こちらのほうが楽に行ける。相手は格上。自分たちは、あくまでもチャレンジャーです」と、青学大との決勝に向けて、プレッシャーとは無縁である。

 日体大との準決勝。慶大は6回表に先制点を許した。その裏二死一、二塁で三番・廣瀬に打順が回ってきた。「すごく良い場面だったので、3ランを打てば流れが変わる。思い通りの打撃ができた」。相手先発は右腕・寺西成騎(3年・星稜高)で、5回まで1安打に封じられていた。「真っすぐが強い。コーナーに投げ分け、甘い球はない。でも、スプリットだけは高めに浮いていたので、これはいける、と」。2ボールから狙いすましたスプリットをたたき、左翼席へ運ぶ逆転3ランを放った。

「自分のバットで決められたのは良かった」

8回裏には2打席連続本塁打。このソロアーチで、試合を決定づけた[写真=矢野寿明]


 8回裏には試合を決定づける左越えソロは、2打席連続アーチ。「真っすぐのインハイの抜け球。そこをさばけたのは、自分の強みでもある」。5対1で、2年ぶりの決勝進出を決めた。ソフトバンクから3位指名を受けた右スラッガーが、貫録を見せた。

 慶大は2021年、東京六大学リーグで春秋連覇を遂げ、6月の全日本大学選手権では34年ぶりの優勝。明治神宮大会では決勝に進出したが、中央学院大との頂上決戦で惜敗。同連盟初の年間タイトル4冠を、あと一歩のところで逃していた。「最後の最後に負けた。悔しかったので、今回は勝って終わりたい」。対する青学大は、グランドスラムがかかっている。

試合後は2つのホームランボールを手に、笑顔を見せた[写真=矢野寿明]


「4冠はさせたくない」と、廣瀬は必勝を誓う。慶應幼稚舎出身で、KEIO一筋16年の集大成である。「神宮で慶應のユニフォームを着てプレーするのは最後。感謝の気持ちを持ちながら、楽しみたいと思います」。今年1年間、相手バッテリーに徹底的に研究され、「難しいシーズンだった」と振り返る。今秋は勝ったほうが優勝の早大3回戦で先制2ランを放ち、V奪還に貢献した。そして、この準決勝でも、圧巻の勝負強さを見せている。

「普段から冷静に野球をやっている。ピンチ、チャンスでも平常心。感情に浮き沈みがない。それが、結果に出ている」。神宮ラストゲーム。常日ごろの練習から、数々の苦難の先に、成果が出ると信じて汗を流してきた。最大の喜びを、チーム全体で共有する「エンジョイ・ベースボール」で、有終の美を飾る。

文=岡本朋祐
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