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【高校野球】中学、高校で日本一 星稜の左腕・佐宗翼が作新学院との決勝で見せた2つの成長

 

苦しんだ軟式球から硬式球への移行


明治神宮大会で32年ぶり3度目の優勝へ導いた星稜高・佐宗は閉会式後、優勝カップを手に笑顔を見せる[写真=田中慎一郎]


[明治神宮大会高校の部・決勝]
11月20日(神宮)
星稜(北信越/石川)3−1作新学院(関東/栃木)

 星稜高の左腕・佐宗翼(2年)は星稜中3年時に全日本少年軟式野球大会(8月)と、全日本少年春季軟式野球大会(コロナ禍の延期で9月開催)を制している。中学軟式野球界で、2度の頂点に立ったわけだ。

 星稜高は明治神宮野球大会で32年ぶり3度目の優勝。佐宗は作新学院高との決勝で1失点完投し、中学、高校で日本一を経験した。

「中学は中学。高校は高校。レベルも違うので、決勝を意識せず、目の前の1勝。一人ひとりを打ち取ることを考えていました」

 決勝で投げ合ったのは右腕・小川哲平。全日本少年春季軟式野球大会決勝で、ALL栃木の主戦として対戦して以来の再戦だった。

「あのときも苦しい試合でした。意識していたので、今回も投げ勝てたのは大きなことですし、試合後、お互い笑顔で握手して『頑張ろう!!』と言えた。春のセンバツ、夏の甲子園も戦い合えるように頑張りたいです」

星稜高の左腕エース・佐宗は作新学院高との決勝で1失点完投した[写真=田中慎一郎]


 周囲は「中学軟式日本一投手」と期待する一方で、佐宗は悩んでいた。軟式球から硬式球への移行に、苦しんでいたのである。作新学院高との決勝では、2つの成長を見せた。

 まずは、生命線となる真っすぐ。北信越大会で計測した最速を2キロ更新する143キロをマークした。広陵高との1回戦では9回6失点完投と、納得のいく内容ではなかった。

「縫い目が浅いような感じがしたボールが違ったり、マウンドも違ったり、対応できなかった。練習の中で意識しながら、もっと低めに投げることを修正してきました。青森山田高との2回戦で最終回を投げたんですが、そこで良い感触を得ました。決勝では立ち上がりが課題だったので、強めに投げること、低めに投げた結果、143キロが出たと思います。球速が伸び悩んでいたので、上がってきたのはうれしいです」

「日本一は、甲子園で取りたい」


 もう一つの手応えは、スライダー。左打者がのけぞるシーンが何度も見られた。ボール球かと思えば鋭い変化で入ってくる。相手校からすれば、厄介な変化球へと進化している。

「家の中でどう、回転をかけるか、時間があればボールを触っていました。独学です。スライダーを投げる際は、真っすぐを投げる意識。三振を取りにいく場面では、体を開かずに腕を振る。左打者の腰に当たるか、当たらないかを狙うとアウトコースへいくんです」

 ツーシームも使えるメドが立ち、内・外で出し入れができることから、的を絞らせない。決勝は1四球とリズム良く117球でまとめた。

「初戦の(広陵高の)高尾(響)君や、今回戦った小川君もそうですし、青森山田の2人(関浩一郎櫻田朔)もとても良い投手ばかりと戦い、全国の中で自分とは球が違うと感じました。まずは真っすぐの強さを磨いて、そうすれば変化球も良くなる。体も大きくしていきたいです」

「秋日本一」も通過点にすぎない。中学、高校で頂点に上り詰めた「達成感」を聞いた。

「優勝した実感はなくて、冬に向けた課題が見つかった大会。日本一は、甲子園で取りたいと思います」

 佐宗は1年夏、2年夏の甲子園に出場しているが、ともに初戦敗退を喫した。「思い上がらない。地に足を着けて、まずは1勝」。今回の明治神宮大会での4試合は、2度の甲子園での教訓を生かす貴重な場となった。

 星稜高は夏の甲子園で2度(1995、2019年)の準優勝がある。2024年春のセンバツ出場は当確の立場(選考委員会は来年1月26日)。佐宗は紫紺の大優勝旗を石川へ持ち帰ることをモチベーションに、充実の冬を過ごす。

文=岡本朋祐
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