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巨人の25歳右腕が急成長 他球団が「戸郷に匹敵する能力」と警戒

 

自身初の2ケタ勝利


多彩な変化球を投げ込み、10勝をマークした山崎伊


 今季3年連続V逸を喫した巨人だが、明るい材料は若手の台頭だ。

 ドラフト4位で入団した門脇誠はプロ1年目でシーズン途中に遊撃の定位置をつかみ、126試合出場で打率.263、3本塁打、21打点、11盗塁をマーク。高卒3年目の秋広優人は長打力と巧みなバットコントロールで首脳陣の評価を高めた。規定打席到達にはあと4打席足りなかったが、121試合出場で打率.273、10本塁打、41打点と奮闘。大きく飛躍したシーズンとなった。

 そして、投手陣の中で一番の大きな収穫が、山崎伊織の成長だった。先発ローテーションに定着した今季は23試合登板で10勝5敗、防御率2.72の好成績をマーク。149イニングで自身初の規定投球回数に達し、2ケタ勝利も初めてクリアした。2月の春季キャンプ第1クールで故障により離脱したため開幕二軍スタートとなったが、4月中旬に一軍昇格すると、7月に4勝0敗、防御率1.91で月間MVPを獲得するなど安定した投球を続けた。

 エースの戸郷翔征は変則のスリークォーターから直球を軸にスライダー、フォークを織り交ぜて打者を抑え込むが、山崎伊はタイプが違う。直球の配分が戸郷より少なく、オーソドックスなフォームからカットボール、シュート、フォーク、スライダー、カーブと多彩な変化球を操る。フィールディング能力も高い。

安定感はセ・リーグ屈指


 巨人OBで野球評論家の川口和久氏は今年4月に週刊ベースボールのコラムで、「昨年5勝を挙げて期待された右腕だが、今年はキャンプ序盤から二軍での調整となっていた。それでも離脱の間、いい調整ができたのだろう。体幹が強くなり、マウンドでの立ち姿が堂々として見えた。立ち上がりこそ不安定だったが、尻上がりに調子を上げ、球種もカットボール、スライダー、シュートをコースに投げ分け、体の近くでの出し入れができていた。四球で崩れる感覚はなく、これから先発の柱の1本になってくれると思う」と高く評価していた。

 他球団のスコアラーは、山崎伊の変化を指摘している。

「以前はカットボールやスライダーに頼っていた感じがしましたが、今年は右打者の懐にシュートを投げ込む配分を増やしたことで踏み込みづらくなった。直球も昨年より力強くなり、制球が良いためなかなか連打が出ない。戸郷に匹敵する能力で、安定感はセ・リーグ屈指だと思います」

 山崎伊の安定感を裏付けるデータがある。1投球回で何人の走者を出したかを表す数値の指標WHIPで0.97を記録。戸郷の1.06を上回り、セ・リーグで規定投球回数に到達した選手の中で、村上頌樹(阪神)の0.74、東克樹(DeNA)の0.95、伊藤将司(阪神)の0.96に次ぐリーグ4位の数字だ。

右肘の状態が悪くてもドラフト指名


 巨人のドラフト戦略も光る。山崎伊は東海大で大学屈指の好投手と評されたが、4年時に右肘の状態が思わしくなくトミー・ジョン手術を受けたため、各球団が指名を回避。巨人は2位で指名した。1年目の21年はリハビリに専念して実戦登板なしだったが、2年目の昨年は5勝、今季は10勝と着実にステップアップしている。

「山崎伊は社会人野球に進むと見られていたが、ドラフト3週間前にプロ志望届を出しました。力はある投手ですが、手術した投手なので即戦力とは言えない。3位以降で指名を検討していた球団があったと聞きましたが、巨人は上位指名した。リスクはあったと思いますが、エースになれる素材と判断したのでしょう。まだまだ伸びしろがある投手ですし、来年以降にどう進化するか楽しみです」(スポーツ紙記者)

 戸郷と2人で計30勝をマークすれば、V奪回がグッと近づく。もう期待の若手という位置づけではない。「先発の大黒柱」としてのパフォーマンスが求められる。

写真=BBM
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