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ベンチはもったいない?  阪神の若手成長株に他球団が「クリーンアップ打てる素材」

 

少ないチャンスで残した結果


4年目の今季、キャリアハイの43試合に出場した小野寺


 岡田彰布監督の下、38年ぶりの日本一に輝いた阪神。脂が乗り切った生え抜きの選手たちがレギュラーに並ぶ陣容は、黄金時代の到来を感じさせる。

 自身4度目の盗塁王に輝いた近本光司、最多安打のタイトルを獲得した中野拓夢の一、二番コンビでチャンスをつくり、殊勲打が光った森下翔太、不動の四番・大山悠輔、後半戦に覚醒を予感させる活躍を見せた佐藤輝明、六番以降は日本シリーズでの活躍が光ったシェルドン・ノイジー、扇の要としてチームを支えた坂本誠志郎、「恐怖の八番」と称された木浪聖也と続く。

 今季の555得点はリーグトップ。昨年の489得点から60点以上を上積みした中で若手がレギュラーを奪い取るのは容易ではないが、他球団のスコアラーが「ベンチではもったいない」と高く評価する選手がいる。右の中距離砲・小野寺暖だ。

「パンチ力に定評がある打者ですが、確実性が格段に上がりましたね。変化球への対応力が上がったことが要因だと思います。追い込まれても軽打で二塁の頭を越える安打を打てる。穴が少ない打者ですし、クリーンアップを担える逸材だと思います」

 プロ4年目の今季は自己最多の43試合出場し、打率.347のハイアベレージをマーク。開幕はファームスタートだったが、5月19日に昇格すると少ないチャンスできっちり結果を出した。スタメン出場は17試合と主力選手の打撃不振や故障時に限られ、チーム事情で3度のファーム降格を経験したが、気持ちを切らさない。得点圏打率.375と勝負強さが光った。

高校時代の思い出


 阪神打線の顔ぶれを見ると、近本、森下、大山、佐藤輝とドラフト1位で入団した選手が主軸に並ぶが、小野寺は育成入団からはい上がったたたき上げだ。京都翔英高では1年の秋から外野のレギュラーをつかむが、甲子園出場の夢はかなわなかった。今年8月に週刊ベースボールの企画<PLAYER'S VOICE>「僕らにとっての甲子園」で、こう振り返っている。

「小さいころからプロ野球より甲子園にあこがれがあったので、甲子園に出るためにずっと野球をやっていました。最後の夏は友達が甲子園に出ている姿を見て、うらやましかったですね。高1の夏に平安(龍谷大平安高)に勝ってから、最後の夏まで全部負けて、平安がずっと優勝していたので、目標が平安を倒すことに変わっていました。3年の夏は、奎二(高橋奎二、龍谷大平安高、現ヤクルト)から打って勝つことができました。延長戦で勝って燃え尽きてしまい、最後の試合は鳥羽にコールド負けでした。自分もそこで目標がなくなって、野球に全然力が入らない気持ちで大学(大商大)に入ってしまった。でも、いろんな方に指導してもらって、途中から大学日本一にしたいという気持ちでまた野球に熱くなりました。今こうやって甲子園に立てているので、野球を続けていて良かったなと思います」

育成ドラフトで阪神へ


 大商大では3年春のリーグ戦でMVP、4年春に首位打者とMVPを獲得するなど主力打者として活躍したが、同学年の橋本侑樹(中日)がドラフト2位、大西広樹(ヤクルト)がドラフト4位に指名された中、小野寺は支配下で名前が呼ばれることなく、育成ドラフト1位で阪神に指名された。

 プロは実力の世界だ。ファームで結果を出し、21年4月に支配下登録に。昨年は開幕一軍メンバーに初めて名を連ねた。今年は一軍で爪痕を残し、順調に階段を駆け上がっている。秋季キャンプでは外野だけでなく、三塁の守備でノックを受け続けていた。ムードメーカーとしてチームを盛り上げる若手成長株は、誰よりもハングリー精神が強い。左翼のノイジー、三塁の佐藤輝明からレギュラーを奪取できるか。小野寺の成長が、チーム力の底上げにつながる。

写真=BBM
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