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「野球もできる人間になりたい」花巻東・佐々木麟太郎が“米国の大学留学”を決めた本当の理由

 

「世界」を見た衝撃


花巻東高・佐々木は12月1日、花巻市内の同校で報道各社の取材に応じた[撮影=BBM]


 高校卒業後の「米国の大学留学」を表明したのは10月10日、履正社高との鹿児島国体1回戦敗退後だった。花巻東高のスラッガー・佐々木麟太郎には4つの選択肢があった。

【1】NPB
【2】日本の大学進学
【3】MLB
【4】アメリカの大学進学

 日本国内の【1】と【2】はある程度、想像できる世界だ。一方で【3】【4】は今夏の甲子園準々決勝敗退後に確認するため、9月に緊急渡米。実際に見ないと、自らの意志で「最終結論」を出せない。佐々木の父であり、花巻東高・佐々木洋監督の方針だった。

 約10日間、5つの大学とMLBのゲームを観戦した。

「アメリカに行くのも初めてだったので『世界』を見た衝撃を受けた。言葉にするのが難しいほど、良さを感じる部分があった。自分としては進路を決めるために行かせていただいた。メジャー・リーグはベースボールの本場。とにかく、楽しかったです。選手と関わることはなかったですが、アメリカの大学を目指す中でモチベーションをもらいました」

 佐々木は生まれながらに、野球に囲まれて育った。花巻東高の先輩である菊池雄星大谷翔平がMLBで活躍するのを目の当たりにし、佐々木が将来の夢として「メジャー・リーグ」を目指すのも自然の流れだった。

 主な高校生で歴代最多となる通算140本塁打。複数のNPBスカウトはスイングスピード、異次元の打球速度と飛距離を評価していたが、佐々木は冷静にジャッジした。プロ志望届の提出を回避。つまり、NPBドラフトのステージに立つことはなかったのである。

「野球選手としても、プロに行けるレベルの選手ではない。今の段階では、アメリカの大学で選手として、どれだけ活躍できるか……。メジャー・リーグは未知の世界。まず、大学で結果を残せるように頑張っていく段階です。先のことは、考え切れていない」

同世代へのリスペクト


 10月26日のNPBドラフトはテレビ中継も見ていない。練習に明け暮れていたという。

「プロも選択肢として、残していた。決断してからは、野球のことしか考えていなかったので、気持ちの部分でも切り替えていました」

 結果は部員からの情報、報道等で知った。

「同世代の選手の皆さんには、自分自身で決めた道がある。そこには覚悟とか、いろいろ迷って決めたと思う。どの大学、どのプロでも何も言える立場にはないですけど、リスペクトしかない。ここの18歳って、人生の相当大きな岐路だと思っています。その中で選んだ道は、相当な覚悟を持って生活しているので、本当に同世代の選手には尊敬しかない」

 なぜ、アメリカ留学なのか?

「自分自身の生き方としては、野球もできる人間になりたい。人生、長い目で見たときに、まだまだ勉強しないといけないこと、学びたいことがあった。両立できるのが、今の自分の選択なんじゃないかと思っています。アメリカでは野球のキャリアと自分の人生としてのキャリアをどうしていくか、プランニングしていきたいと思います」

「自分の人生を考えた選択」


 誤解してはならないことがある。この日の取材対応で、佐々木が最も強調した事項がある。

「今回、メジャーへの近道ということで、アメリカの大学を選んだというのではなくて、自分自身の人生を、広い世界で選びました。繰り返しになりますが、メジャーへ行くために、アメリカへの留学を決断したのではありません。自分の人生を考えた選択です」

 言葉の壁。佐々木が直面している現実だ。

 鹿児島国体後、本格的に語学の勉強に着手。練習の合間で週3〜4回、オンラインでの英会話塾も受講している。

「留学生として、英語の資格をある程度、取っていかないと、先に進むことはできない。レベルとしては、アメリカの人たちと討論、議論できるぐらいまでに上げて、あっち(アメリカ)に行きたいと思っています」

 佐々木は約5校の中から進学先を最終選定するために、再度、渡米するという。すべては自分の目で見て決めるのが、ポリシーだ。

「もちろん、不安はありますが、自分自身は楽しさ、ワクワクする部分が大きい。怖さを乗り越えた先に、いいものがあるんじゃないかと思って、モチベーションにしています」

 18歳、前例のない挑戦が始まった。佐々木は日々、自らの足で新たなルートを切り開いていく。語学の洗礼を浴びる日々だが、目的意識が明確であり、その表情は明るかった。信じた道には必ず、明るいゴールが待っている。

文=岡本朋祐
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