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“攝津正2世”の呼び声も 阪神の下位指名右腕が「新人王のダークホース」に

 

ドラフト上位より即戦力度は上!?


今秋のドラフトで阪神に5位指名された石黒


 この右腕の名前を聞いて、高校時代が脳裏をよぎった野球ファンは少なくないだろう。阪神のドラフト5位で指名された石黒佑弥(JR西日本)だ。

 石黒は星城高のエースだった3年夏に番狂わせを起こしている。愛知県大会2回戦。世代を代表するスラッガー・石川昂弥(現中日)を擁し、同年春のセンバツ大会で全国制覇を飾った強豪の東邦と対戦して10対3で8回コールド勝ちを飾った。石黒は強力打線を3失点に抑え、打撃でも石川昂から3ランと投打で大活躍。社会人野球で4年間経験を積み、体は大きくなり、直球は力強く変化球の精度も格段に上がった。満を持して、プロの世界に飛び込む。

 アマチュア野球を取材するスポーツ紙記者は、石黒の実力を高く評価する。

「即戦力という観点で言えば、ドラフト1位の下村海翔(青学大)、2位の椎葉剛(四国IL/徳島)より上かもしれません。右腕が遅れて出てくる力感のない独特のフォームで直球は浮き上がるような球質です。絶対的ウイニングショットとなる変化球を磨く必要はありますが、左打者の内角に食い込むカットボールは一軍で十分に通用する。制球力が良いので四球で崩れる心配がない。投球スタイルを含めてソフトバンクで活躍した攝津正と重なります。クイックが速く、打撃も野手顔負けです。野球センスが高いんですよね。先発、救援とどちらでも対応できるので起用法の幅が広い投手で、新人王のダークホースになる可能性がります」

濃厚なプロ野球人生だった攝津


ソフトバンクで先発、中継ぎで活躍した攝津


 現役生活は10年と長いとは言えないが、攝津のプロ野球人生は濃厚だった。テークバックがコンパクトなフォームから抜群の制球力が武器で、新人の09年に70試合登板、5勝2敗34ホールド、防御率1.47と救援でフル回転して新人王を受賞。翌10年も2年連続リーグ最多の71試合登板、4勝3敗1セーブ38ホールドで2年連続最優秀中継ぎ投手に輝いた。11年から先発転向し、14勝8敗、防御率2.79とすぐに結果を出す。12年は17勝5敗、防御率1.91で最多勝、最優秀投手(勝率.773)、沢村賞と投手タイトルを総ナメに。不動のエースとして右腕を振り続け、16年まで5年連続で2ケタ勝利をマークした。攝津もドラフト5位で入団し、高校から社会人野球を経てプロ入りしており、石黒は偉大な右腕と重なる。

先輩たちも良きお手本


 阪神でもドラフト5位で入団した先輩たちに良きお手本がいる。21、22年と2年連続最多勝に輝いた青柳晃洋、今季最優秀防御率とMVPを受賞する大活躍で38年ぶりの日本一に大きく貢献した村上頌樹だ。この2人だけではない。下位指名から大ブレークした選手が多いのが阪神の特徴だ。チャンスメーカーとして1年目からレギュラーをつかみ、今年最多安打のタイトルを獲得した中野拓夢、救援の屋台骨を支え続けて自身初の最多セーブのタイトルに輝いた守護神・岩崎優、侍ジャパンのメンバーに選出され、今年3月のWBCで世界一に貢献した湯浅京己はいずれもドラフト6位からサクセスストーリーをつかんだ。

 今季リーグトップのチーム防御率2.66をマークした阪神の投手陣の中に割って入り、一軍定着するのは容易ではない。だが、実戦で結果を残し続ければ、岡田彰布監督は必ずチャンスを与える。石黒は01年生まれの「佐々木朗希世代」。佐々木朗、宮城大弥、そして高校時代に対戦した石川昂が一軍の舞台でプレーしている様子を見ていた。昨秋もドラフトの有力候補に挙げられながら指名漏れを経験しただけに、期する思いは強いだろう。同期入団の下村、椎葉は同学年で切磋琢磨する環境が整っている。甲子園の大観衆の声援を受け、マウンドで躍動する姿が楽しみだ。

写真=BBM
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