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岡田阪神、現役ドラフトで新加入の「育成出身右腕」が守護神候補に

 

覚醒すれば大きな戦力


今季は16試合の登板に終わった漆原


 12月8日に開催された現役ドラフト。投手王国の阪神が獲得した選手が、オリックス漆原大晟だった。岡田彰布監督が映像を確認して潜在能力を高く評価したという。今オフは外部補強に動いていないため、現役ドラフトによる漆原獲得が現時点で唯一の日本人補強だ。

 今季は16試合登板で0勝0敗1ホールド、防御率3.00。4月1日に一軍昇格すると9試合連続無失点と好投を続けていたが、6月上旬以降は救援陣が充実していた背景もあり3カ月以上ファーム暮らしだった。シーズン終盤に再び昇格したが本来の力を発揮できず。新天地で再スタートを切ることになった。

 移籍先の阪神も、オリックスに劣らない強固な救援陣だ。今年の救援防御率2.37はリーグトップ。ただ、一軍で割って入るポジションがまったくないわけではない。守護神で期待された湯浅京己が今季は不調と故障により6月中旬から長期離脱。この穴を埋めたのが2年連続でセットアッパーから抑えに回った岩崎優だった。60試合登板で3勝3敗35セーブ12ホールド、防御率1.77と奮闘。自身初となる最多セーブのタイトルを獲得した。

「来季も岩崎が抑えを務めるのか、湯浅を戻すのかまだ不透明ですが、シーズン前の実戦登板を重ねてどの布陣がベストか判断することになると思います。漆原も候補の1人になるでしょう。持っている能力を出し切っているとは言えず、覚醒すれば大きな戦力になる」(スポーツ紙記者)

剛速球を武器に高めた評価


 宇田川優希東晃平と育成出身の選手が次々に支配下昇格して頭角を現しているが、その先駆けが漆原だった。新潟医療福祉大から育成ドラフト1位で入団。プロ1年目の19年にウエスタン・リーグで39試合登板し、1勝0敗23セーブでセーブ王に輝くなど150キロを超える剛速球を武器に評価を高める。

 翌20年2月に支配下昇格。週刊ベースボールのインタビューで、「自信があるのはストレート。そこを評価していただいたと思っています。その真っすぐで上のレベル(一軍)の選手と、どう勝負してくかが今後のポイントになる。球速が出るストレートではなくても、スピンの効いた真っすぐを投げていきたい。その武器を生かすためにも、変化球を生かしたいんですよね」、「緩いカーブが良くなれば、真っすぐがより速く見える。そうなれば、打者が真っすぐを意識してくれるので、今度はスライダーやフォークの速い変化球が生きてきます。でも、速い変化球が明らかなボール球になれば意味がない。1つだけをレベルアップさせるのではなく『真っすぐをどう使うか』『どう見せるか』という点で、3球種を磨いていきました。どれも勝負球に使えるようにするのが理想で、それはキャンプでも引き続き取り組んでいたことでもあるんです」と語っていた。

熾烈な競争を勝ち抜いて


 8月21日から当時二軍監督だった中嶋聡監督が一軍監督代行に就任し、一軍に昇格。デビュー登板となった23日の西武戦(京セラドーム)は3点リードの9回というセーブシチュエーションだったことが期待の大きさを物語っていた。2点を失ったがプロ初セーブをマークした。21年は開幕から守護神を託されたが痛打を浴びる場面が目立ち、中継ぎに配置転換された。34試合登板で2勝2敗2セーブ4ホールド、防御率3.03。フォームのバランスを崩した昨季は一軍登板なしに終わったが、今季は直球に力強さを取り戻して復活の兆しを見せた。

 オリックスでは大輪の花を咲かせられなかったが、高く評価してくれた阪神で野球人生が続く。オリックスの球団公式ホームページを通じ、「育成ドラフトで指名していただき、在籍した5年間で色々なことを学び、成長させてもらったオリックスには感謝の気持ちしかありません。良いときも悪いときも、ファンのみなさんには温かい応援で支えていただきました。本当にありがとうございました。指名していただいた阪神タイガースで活躍することが恩返しにも繋がると思いますので、1試合でも多くチームの勝利に貢献できるようにがんばります」とコメントを発表した。

 熾烈な競争は来年2月の春季キャンプから始まる。右腕を振り続けて、己の存在をアピールする。

写真=BBM
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