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【社会人野球】なぜ日産自動車は野球部復活を決断したのか…3つの経緯とは?

 

活動再開は珍しいケース


日産自動車・濱口常務執行役員は、本社硬式野球部[横須賀市]が2025年に活動を再開する経緯について説明した[写真=BBM]


 日産自動車は12月21日、本社硬式野球部の監督に伊藤祐樹氏(福井工大)、ヘッドコーチに四之宮洋介氏(青学大)が内定したと発表。同社は9月12日、2025年から同部の活動再開を予定していることを明らかにしていた。

 日産自動車硬式野球部(横須賀市)は1959年創部。都市対抗優勝2度、社会人日本選手権優勝1度の名門だが、2009年限りで休部していた。14年の時を経て復活。12月21日の記者会見では、具体的な活動方針が示された。

 社会人野球を統括する日本野球連盟(JABA)によると、企業チーム(会社登録)は1963年の237チームをピークに、一時は90チームを割ったが、2021年は97チームと推移する。業績不振により野球部存続が難しくなり休・廃部に。日産自動車のように、休部となったチームが活動を再開するケースは珍しい。

 なぜ、再び、会社として野球部を持つことを決断したのか。21日の会見で日産自動車・濱口貞行常務執行役員は3つの経緯を説明した。

 まずは、会社としての役割である。

「良い車を作って、喜んでいただくことで、事業が成り立つ。それだけで良いのだろうか……と。会社というのは社会の中で存在し、社会の一員である。それ以外の領域でも社会に貢献できるのであれば、使命の一つとして果たすべきだ、と考えています」

 次に、会社としての経営理念である。

「意識改革。風土改革。根っこにあるカルチャー、風土がしっかりしないと、持続的な成長はできません。会社を支えるものがグラグラすると、変なことが起きたりする。野球部自体で(会社が)繁栄するわけではありませんが、彼らの活動、試合を通して、ワンチーム、一体感を高める。皆で、上も下も関係なく共有し、一つの目標(勝利)に突き進んでいくことが大事。野球がすべてというわけではありませんが、活動を通して、勇気を与えてくれることは、紛れもない事実です」

 最後に会社の都合上、絶好の機会だった。

「2020年5月に発表した『事業構造改革計画』は、23年度が4カ年計画の最終年度。立て直しが出来上がりつつある。野球部を復活させたらどうか? 将来の成長に向け、日産が飛躍していく、ちょうど良いタイミングでした」

 日産自動車硬式野球部は「シンボルチーム」としての新たな発信により、会社全体の士気高揚、社会貢献、地域貢献と影響力を与えていく。24年1月1日付で「復活プロジェクト」が発足する。同部署の専任メンバーとなる伊藤氏と四之宮氏は25年の活動再開に向けて、学生のスカウティング、グラウンド、施設整備などの準備を急ピッチで進める。

文=岡本朋祐
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