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飛距離は球界トップクラス…覚醒待たれる「中日の和製大砲」は

 

大ブレークの可能性


飛躍を期した2年目だが2本塁打に終わった鵜飼


 海の向こうから明るいニュースが飛び込んできた。台湾で開催されていた「2023アジア・ウインター・ベースボール・リーグ(WL)」で、中日鵜飼航丞が16試合出場で打率.280、4本塁打、12打点をマーク。本塁打王に輝いた。

 飛距離はチームでトップクラスだ。昨年のフェニックス・リーグの西武戦(南郷)ではバックスクリーンのスコアボード上部に直撃する特大アーチを放ち、「あんな打球は外国人選手でも見たことない」と首脳陣やナインを驚かせた。今季の中日打線はリーグワーストの390得点、リーグ最少の71本塁打と得点力不足に悩んだ。頭角を現してほしい和製大砲だが、現実は厳しかった。41試合で打率.143、3本塁打、5打点。得点圏で打率.083とふるわず、一軍に定着できなかった。94打席で31三振は多すぎる。ウエスタン・リーグでは73試合で打率.287、7本塁打、38打点と結果を出しているだけにもどかしい。

 スポーツ紙記者は、「飛距離は球界トップクラスでしょう。課題はコンタクト能力を高めることに尽きる。直球をファウルにする打ち損じが目立ち、ボール球になる変化球を見極めることに試行錯誤を繰り返している。きっかけをつかめば、細川成也のように大ブレークする可能性を秘めているだけに殻を破ってほしい」と期待を込める。

変化球への対応に苦慮


 ドラフト2位で入団した昨季は球団の新人で唯一の開幕一軍入り。「三番・左翼」でスタメン出場した3月30日のDeNA戦(バンテリン)で、石田健大からプロ初アーチとなる左越え2ランを放った。野球評論家の伊原春樹氏は週刊ベースボールのコラムで、「セ・リーグで、ほかに目についたのは中日の鵜飼航丞と広島末包昇大だ。ともにプロ初本塁打を放っているが、ファーストストライクから力強いスイングで投手に圧を掛ける。将来の主軸としてチームを引っ張る存在になることを予感させる。昨年、新人で史上4人目の打率3割&20本塁打を達成した牧秀悟(DeNA)のようになれるか。非常に楽しみな存在であるのは間違いない」と期待を込めていた。

 鋭いスイングスピードから放たれる長打が魅力の若手成長株に、相手バッテリーの警戒が強まる。一軍レベルは甘い球がなかなか来ない。変化球への対応に苦労し、交流戦ではNPB野手の連続打席三振記録「9」を喫した。6月下旬にファーム降格。7月にウエスタン・リーグの試合で自打球を左ふくらはぎに当てて途中交代し、左腓腹筋内血腫の除去手術を受けた。一軍に再昇格したのは9月下旬。59試合出場で打率.206、4本塁打、16打点と確実性に課題を残した。

ライバルに打ち勝つために


 外野の定位置奪取を狙った今季だが、不完全燃焼に。来季の外野の布陣を見ると、中堅は岡林勇希、右翼は細川成也が有力で、左翼が激戦区だ。通算2000安打を達成した大島洋平が控えるが偉大なレジェンドを追い越さなければ、出場機会が増えてこない。同期入団のブライト健太、今オフにソフトバンクの戦力構想から外れて加入した上林誠知に加え、メジャー通算40本塁打のアレックス・ディッカーソンも入団が決まった。ライバルは多いが、大きな魅力である長打力でアピールできるかがカギを握る。

 名古屋で生まれ育ち、幼少の頃から中日ファン。入団会見では将来の目標として、中日の四番打者で40本塁打をマークすることを掲げていた。年齢は3学年上だが、同期入団の右打者で長打力が武器の末包は今季65試合出場で打率.273、11本塁打、27打点と1軍レベルの投手に対する対応力が高まり、頭角を現してきている。鵜飼も負けられない。和製大砲の覚醒が待たれる。

写真=BBM
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