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【大学野球】「赤門旋風」を経験した強力タッグの誕生 優勝を目標に掲げる東大監督&助監督

 

「頼もしい相棒です」


昨年11月、東大・大久保助監督が監督に就任。1月8日に初練習を行い、根津神社で必勝祈願した[写真=BBM]


「赤門旋風」を経験した強力タッグの誕生だ。

 東大は大久保裕助監督が昨年11月、監督に昇格。2019年11月から井手峻前監督を支える助監督として、母校を指導していた。井手前監督が病気療養で、昨年は春、秋と大久保助監督が監督代行として指揮。東大の監督は「1期2年」。井手前監督は昨秋限りで任期満了により退任し、新監督の人選が進められた。

「後任はOBの中から公募で選ぶ」との内規があり、大久保助監督が自ら手を上げた。

「井手さんの下で4年間やらせていただき、引き続き、やらせていただきたい、と。選手と一緒に、グラウンドで頑張ってみたいと思いました。OB会(一誠会)の承認を経て、就任の運びとなりました。助監督とは責任感、立場が違う。しっかりやらないといけない」

 大久保監督は湘南高(神奈川)出身。東大4年春(1981年)には主将(三番・遊撃手)として勝ち点2(6勝7敗1分)の4位と「赤門旋風」の原動力の一人となった。卒業後は社会人・三菱自動車川崎で3年プレー。攻守のきめ細やかな指導には定評がある。

 昨年は大人の指導者が、大久保助監督一人だった。一誠会では、新たな助監督の人選に着手。数人の候補者の中から、大久保監督の同級生である石井清氏に白羽の矢が立った。

「若い人は仕事もあるので、現実的に難しい部分がある。時間的な余裕がある我々世代でないと……(大久保監督は4月で66歳)。年に何回か会う機会があり、『どう?』と打診すると、受けていただけることになりました」

 石井助監督は「赤門旋風」で俊足の一番打者だった。80年秋には東大におけるシーズン最多9盗塁。大久保監督は「50メートル走は6秒台前半だったのでは……。速かったです」と、リードオフマンとして打線を引っ張った。卒業後は日本生命でプレーし、マネジャーも歴任し、名門社会人チームを運営面で支えた。

「入学後、一誠寮には入れず、私、石井、相賀(英夫、赤門旋風時の二番・二塁)の1年生3人は駒場寮に入り1年間、大部屋で生活していました。その後、負けたときのつらい思いも一緒に共有し、何とか頑張って、神宮で勝つことも経験してきました。石井助監督は3月までは仕事がありますので、土、日限定での指導になりますが、4月以降はフルで見てくれる。心強い。頼もしい相棒です」

ハードルを大きく上げて


大久保監督[左から2人目]と東大で同級生の石井清氏[左端]が助監督に就任。2024年の新体制が本格的にスタートした。右から藤田峻也主将、岩瀬笑太主務[写真=BBM]


 東大は1998年春から52季連続最下位。学生主体の運営が伝統であり、新主将・藤田峻也(新4年・岡山大安寺中等教育)は「優勝」を目標に掲げた。東大は1946年春の「2位」が最高成績である。例年は「最下位脱出」「勝ち点2」と、ある意味、現実的な路線を設定するが、今年はハードルを大きく上げたのだ。

「よそのチームは毎年、ゲームに勝って、常にNo.1を目指している。天皇杯を争う素晴らしい舞台なので、他の大学と同じように目標として優勝、天皇杯を目標とする。学生たちが『やるからには!!』と積極的で、威勢が良い。井手さんのときと変わらず、自主的な活動を尊重したいと思います。目標が変わったから、ウチが強くなるわけではない。他の5大学は新入生が加入してきますが、ウチは合流が4月以降。3学年、選手70人で頑張っていきたい。現実的には難しいかとは思うんですが、接戦を勝ち切るチーム力をつける。井手さんも言っていましたが、ウチが勝つにはロースコアで、投手は完投、完封しかない」

 打線は「他の大学と比べても遜色ない」と大久保監督が評価する一番・酒井捷(新3年・仙台二高)がけん引。昨秋は打率.324でベストナインを初受賞し、大学日本代表候補合宿にも参加した左の巧打者だ。投手純は平田康二郎(新4年・西高)、鈴木太陽(新4年・国立高)の右腕2人に、左腕・双木寛人(新4年・西高)の最上級生に加え、サブマリン・渡辺向輝(新3年・海城高)も期待を寄せる。

「1月9日から東大球場の内野人工芝の工事に入ります。土、日は日本製鉄かずさマジックさんのグラウンドを借りる予定です。(渡辺向輝の父である)渡辺(渡辺俊介)監督からもアドバイスをいただければと考えています」

 東大は21年に春1勝、秋1勝、22年は秋1勝、そして、昨秋は1勝と、着実に力をつけている。神宮で勝つ喜びを知る大久保監督と石井助監督が「令和の赤門旋風」へと導く。

文=岡本朋祐
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