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【大学野球】コミュニケーションツールは“トンボ” 戦う集団に仕上げる東海大・長谷川国利新監督

 

40年ぶりの母校復帰


東海大・長谷川新監督は1月12日、初めてユニフォームを着て、グラウンドで指導。手にはトンボを持ち、学生との距離を縮めている[写真=BBM]


 コミュニケーションツールは、トンボである。

「マネジャーにお願いして、新たに発注しました。1月30日には届く予定です。OBからは『ノックバットは?』と聞かれましたが、まずはトンボで環境整備。グラウンド整備をしながら、学生たちと話をしていきたいです」

 東海大は1月11日、長谷川国利氏(62歳)の硬式野球部監督就任を発表した。1962年生まれ。東海大相模高、東海大を通じて強打の外野手として活躍し、85年ドラフト4位で大洋に入団。90年限りで現役を引退し、スコアラーを経てスカウトを2002年まで務め、03年からは巨人へ。スカウト、スカウト部長、編成本部付部長、査定、プロスカウトらを歴任し、23年は女子チームの助監督を歴任した。

 母校に戻るのは、40年ぶりである。

「原先生(貢、元・東海大相模高、元・東海大監督)、岩井先生(美樹、国際武道大監督)から多くの指導を受け、志高く、目標に向かって過ごした高校、大学での7年間でした。長男、次男も東海大相模高、東海大でお世話になっており、感謝しかありません。恩返しができるのであれば、どんなことでもやらせていただきたいと思っていました。大学は社会に出る上での最後の準備期間。合宿所で寝食をともにし、学生への手助け、社会に出たあとに困らないような教育をしていきたい」

 スカウト歴は約30年。人と人をつなぐ仕事であり、指導現場にも生かされるという。

「高校、大学、社会人と全国の監督、コーチと接する機会があり、多くの素晴らしい指導者から勉強させていただきました。私なりに経験した良い部分を、踏襲したいと思います」

スタッフ2人は、長谷川監督がお願いした。野球部運営において、バランスの取れた指導陣である。左から田中助監督、長谷川監督、酒井コーチ[写真=BBM]


 長谷川監督のカラーは、スタッフ人事に出ている。助監督には田中大次郎氏(55歳、トヨタ自動車元監督)、コーチは酒井勉氏(60歳、元オリックス)にお願いをした。

 田中助監督は東邦高、東海大を経て、トヨタ自動車では選手9年、コーチ5年の後は社業に専念。2013年から3年間、監督として率い、14年の日本選手権で優勝へと導いている。長谷川監督が期待するのは「運営力」だ。田中氏は監督退任後、ビーチバレーボール部の立ち上げに尽力(部長)し、21年の東京五輪では代表選手を輩出。チームを動かすマネジメントに長けており、積み上げた豊富な人脈から、学生の卒業後の就職サポートも期待する。

「野球の指導も大事ですが、その前の段階が大切。トヨタの監督就任時もグラウンドの石拾いから始まり、寮ではスリッパをきれいに並べるなど、基本的なことからたたき込んできました。今でも継続されている。そうした細かいことが徹底されているチームは強い。長谷川監督と学生をつなぐパイプ役となり、チームを一つにしていきたい」(田中助監督)

原先輩からのメッセージ


 酒井氏は東海大浦安高、東海大、日立製作所を経て89年ドラフト1位でオリックスに入団した。1年目の89年に9勝を挙げて新人王。96年に現役を引退するまで通算33勝を挙げた。その後はオリックス、楽天で計16年のコーチを歴任。また、オリックスではスカウトとしても逸材発掘に尽力した。2022年からは2年間、金沢学院大のコーチを務め、学生野球の現場も理解している。

「これだけの多くのOBがいる中で、母校のユニフォームを着られるのは幸せです。一方で責任もある。長谷川監督も相当、プレッシャーがかかっていると思います。タフな投手陣、タフな集団を育て上げ、長谷川監督を胴上げしたいと思います」(酒井コーチ)

 長谷川監督は「野球は投手です」と語る。最近はブルペンでの球数が減少傾向にあるが「肩・肘のスタミナを構築することはもちろんですが、投げ込む中で、力の抜き方も覚える。そこは、私と酒井コーチは共通した考えです」と、指導力に大きな期待を寄せている。

「(3人とも)原先生、岩井先生の門下生ですから意思疎通が取りやすい」(長谷川監督)。学生も迷いなく、学校生活、寮生活、練習に集中できる環境が整う。

 元旦。長谷川監督は高校、大学を通じて4学年先輩の原辰徳(巨人前監督)に電話で新年のあいさつをした。心温まるメッセージをもらい、あらためて、身が引き締まる思いがした。

「初日の出のように真っすぐ、思い切って頑張ってほしい。困ったときには、いつでも連絡をくれれば、力になります」

 東海大が加盟する首都大学リーグは昨秋までライバル・日体大が3連覇中。「われわれがチャレンジしていく。良い構図だと思います。優勝を目指さないと、頑張ることもできない。やる以上はリーグ優勝、日本一を目標にしていかないと、厳しい取り組みもできない」。

 長谷川監督は部員と面談した上で、寮生活の見直しから着手し、戦う集団へ仕上げていく。

文=岡本朋祐
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