「パワーは相当やし、伸びしろも十分」
来日2年目の今季、ミエセスは能力を完全開花させることができるか
助っ人外国人選手に対する考え方に変化が生まれ始めている。一昔前は来日1年目からクリーンアップで30〜40本塁打を打つことが期待されたが、NPBの投手の水準が上がり、メジャーに定着できなかった選手が異国の地ですぐに結果を出すのが難しくなっている。昨年のセパ打率10傑で、ランクインした来日1年目の外国人選手は1人もいなかった。
日本野球に適応するまでは時間が必要になる――。
阪神は
シェルドン・ノイジー、ヨハン・ミエセスと今季の契約延長を決断した。昨年の成績は満足のいく内容ではなかったが、ノイジーはCSファイナルステージ、日本シリーズの短期決戦で見せた活躍が評価を高めた。ミエセスも今後の伸びしろを期待され、残留が決まった。
岡田彰布監督は22年10月に週刊ベースボールのコラムで、ミエセスについてこう語っている。
「風貌がワイルドでメジャー・リーグの
ゲレーロ・ジュニア(ブルージェイズ)によく似ているが、日本でたくさん教えることがあるやろな、という印象である」
「パワーは相当やし、伸びしろも十分。でもすぐには通用しないやろな。それくらいのことを考えていたほうがいいと思う。ただ一発の魅力を持つのは間違いない。ビデオを見たけど、パワーは半端ないからね。それを生かせるように、育てていくのがわれわれの仕事。それを強く考えている」
勝負強い打撃でインパクト
即戦力として期待されたノイジーと比べ、粗削りなミエセスは日本野球に適応するためにじっくり育てる方針だった。開幕を二軍で迎えたが、素質の片鱗を見せた時期は想定より早かった。一軍初昇格した5月5日の
広島戦(マツダ広島)で、左腕・
塹江敦哉から左中間に初アーチ。鮮烈デビューを飾ると、16日の
中日戦(豊橋)で来日初の決勝打、18日の中日戦(バンテリン)でも初回二死満塁で
柳裕也から三塁線を破る走者一掃の適時二塁打と、勝負強い打撃でインパクトを残す。6月はストライクからボールゾーンになる変化球を見極め、2ストライクに追い込まれるとコンタクトを重視した打撃で安打を放つなど成長の跡が。7月以降は代打での出場が主になったが、大きな可能性を抱かせた。
プレーだけでなく、天真爛漫なキャラクターで愛された。右手で目元付近にピースする「ギャルピース」はトレードマークに。チームメートだけでなく岡田監督からも「ミエちゃん」と愛情を込めて呼ばれるなど、すっかりチームに溶け込んでいる。
激しい左翼手争い
来日2年目の今季は勝負の年になる。外野陣を見ると、中堅は攻守の要である
近本光司で確定。右翼は2年目の
森下翔太が有力候補となる。激戦区が左翼だ。昨年はノイジーがチーム最多の121試合でスタメン出場したが、打率.240、9本塁打、56打点と物足りない数字だった。今年はオープン戦の結果次第で、ほかの選手に取って代わられる可能性がある。昨年に43試合出場で打率.347とコンタクト能力が格段に高まった
小野寺暖、未来の主軸候補・
前川右京、プロ1年目の昨季ウエスタン・リーグで打率.303、6本塁打の好成績を残し、オフに育成枠から支配下昇格した
野口恭佑、そしてミエセスがレギュラー候補になる。
他球団のスコアラーは「ミエセスは日本で1年間プレーしてリズムをつかんだでしょう。対戦を重ねて配球や投手の特徴もインプットされていったと思う。もともと長打力はすごいので、甘い球を一発で仕留める能力を磨いてレギュラーをつかめば、本拠地が広い甲子園でも20本塁打はクリアできる」と警戒を強める。
広島で7年間プレーして通算133本塁打をマークした
ブラッド・エルドレッドはシーズン途中に入団した12年に11本塁打、13年に13本塁打と試行錯誤したが、14年に37本塁打と大爆発。本塁打王のタイトルを獲得している。阪神を常勝軍団に導くため、ミエちゃんも覚醒できるか。
写真=BBM