週刊ベースボールONLINE

大学野球リポート

【大学野球】三軍からはい上がったスラッガー 法大・武川廉が今春狙うは「三冠王」

 

父は元プロスノーボーダー


法大の副将・武川は今春の東京六大学リーグ戦での「三冠王」を狙う[写真=BBM]


 Cチーム(三軍)から這い上がってきた。

「結構、苦しかった。Bチーム(二軍)も長かったので……。やるしかないと思っていた」

 法大・武川廉(4年・滋賀学園高)は2023年、飛躍のシーズンを過ごした。3年生となって初めて中心メンバーであるAチームに定着すると、右の不動の三塁手として春は打率.396、秋は打率.321を残した。年間39安打(春21、秋18)は慶大・栗林泰三(今春からJR東日本入社)に次ぐ量産ぶりだった。6、12月には侍ジャパン大学代表候補合宿に参加。一流のレベルを体感し、貴重な経験を積んだ。

「目指していたところではありましたが、1年前の今頃を思い返すと、信じられない。どの投手を相手にしても、ある程度の結果を残せた。多くの経験をさせていただきましたが、おごらず、慢心せずに練習を積んでいきたい」

 2年春のシーズンを前に、Bチームのオープン戦で左手有鈎骨を痛め、手術を受けた。

「未成年でしたので、東京に母親(美穂さん)が付き添いで来まして、顔を見ると『何をやっているんだろう』と……。なんとなく野球をやっている自分がいたんです。故障をして、考えをあらためるきっかけになりました」

 2カ月後に復帰すると、ベースとなる練習量を増やした。2年の冬場には、大島公一助監督(2024年1月1日付で監督就任)とのマンツーマン指導でレベルアップ。「自分のポイントで打つ。バットを振り切る」と、23年春以降の活躍につなげる技術を習得した。

 父・徹さんは、元プロスノーボーダー。現在はスノーボードの設計に携わる仕事の傍らで、武川の4歳下の弟・慎さん(プロスノーボーダー、五輪強化選手。ロングボードプロとの二刀流)の海外遠征に帯同することもある。武川も小学校低学年まではスノーボードに接してきたが、3年以降はソフトボールに専念(中学進学後、大東畷ボーイズで野球を始める)。運動センスのDNAを継いでいる。

 新チームで副将に就任し、自覚と責任が増す。

「優勝、日本一という大きな目標がありますが、24年を終えて『充実した1年だった』と振り返られるような生活をしたい。その環境を整えられるように努めたいと思います」

「プロを目指したい思いはある」


 今春の目標は、打率、本塁打、打点でトップに立つ「三冠王」だ。

「宗山(宗山塁、明大4年・広陵高)が打率5割、5本塁打が目標と言っているんですよね……。そこは無理ですが(苦笑)、三冠を狙えるような選手になりたい。まだ、ホームランがないので、神宮で打ちたいです。宗山とは代表候補合宿でも、よくしゃべるほうなんです。自分がBチームにいた下級生時代から、すでに活躍していた。明治のキャプテンで人間的にも謙虚な選手。見習うことは多いです」

 大学卒業後の進路については「現時点ではそういう選手ではない」と、プロについては慎重に語るも「今後、話し合っていくことになりますが、まずはプロを目指してやっていきたい思いはある」と言葉を選んだ。

 3年間、指導してきた大島監督は「もともとポテンシャルの高い選手。ようやく本領を発揮してきた。もっと伸びる選手」と、今春は二塁での起用を示唆する。「目指す選手像はタイプ的には楽天浅村栄斗選手、ヤクルト山田哲人選手です」(武川)。CチームからBチーム、そして、Aチームとステップアップしてきた苦労人が攻守の軸となり、2020年春以来のリーグ優勝へ導く。

文=岡本朋祐
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング