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【高校野球】センバツ21世紀枠…主催者側も「実力」が前面に出るのは本意ではないはず

 

今年は別海高(北海道)、田辺高(和歌山)


大阪市内で行われた選抜選考委員会。21世紀枠は「21世紀枠候補校推薦理由説明会」[写真]と「21世紀枠特別選考委員会」を経て、選考委員会総会で2校が発表[写真=BBM]


 第96回選抜高校野球大会の選抜選考委員会が1月26日、大阪市内で行われ出場32校(一般選考枠30校、21世紀枠2校)が決まった。

 センバツの特色である「21世紀枠」は2001年の第73回大会から導入。07年までは2校、08年の第80回記念大会では3校となり、09年以降も3校が定着していた。なお、13年の第85回記念大会と、コロナ禍で20年の明治神宮大会中止により、明治神宮大会枠がなくなった21年は、最多4校が選出されていた。今大会は出場枠の見直しがあり、21世紀枠は従来から1枠減で、07年以来となる2校となった。今回は東日本、西日本と地域を限定せずに選考され、1校目は別海高(北海道)、2校目は田辺高(和歌山)に決まった。

 同枠の推薦・選考の基準には、いくつかの原則がある。「困難な環境の克服」「少数部員の克服」「地域貢献活動」「学業と部活動の両立」。また、近年における実績で、甲子園にあと一歩届いていないという背景も加味。実力以外が評価対象の特別枠として、定着している。

「21世紀枠候補校推薦理由説明会」の9校による各都道府県の理事長・専務理事によるプレゼンの持ち時間は、各3分30秒である。1校目で選出された別海高は、北海道高野連・横山泰之専務理事が思いを込めて説明した。札幌から空路50分。現地で得た生の情報を発信した。「別海町が引っ繰り返るような新しい歴史を作ろう!!」。島影隆啓監督の言葉を引用し、最大限のアピールが功を奏した。

 2校目は別海高を除く8校で評価の高かった4校を中心に議論が展開され、僅差で田辺高が76年ぶりに選出された。教育相談を担った経験がある田中格監督が、スクールカウンセラーと提携。多様化が叫ばれるこれからの時代の一つの指導方針として評価された。

 部員18人(女子部員を含めると22人)。「愛される野球部」がモットーで、振興・普及を目的とした少年野球教室など、紀南地方を盛り上げるための地域貢献にも積極的に取り組んでいる。21世紀枠の基本理念に合致した日々の活動の「成果」として、田辺高には野球における「実力」も備わっていた。

 県大会では準々決勝で市和歌山高、準決勝で智弁和歌山に勝利。和歌山をリードする「2強」を撃破し、県準優勝校として近畿大会に駒を進めた。選考委員長を務めた日本高野連・寶馨会長は、田辺高の選出理由を語った。

「進学校で野球部員が少人数ながらも、強豪校を打ち破り、近畿大会でも善戦。『21世紀枠の学校は、ほとんど勝てないんじゃないか』という批判もある中で、実力校として伝統校の田辺が評価された」

 誤解をしてはならないのは「実力校」というのは、あくまでも後づけ。主催者側も「実力」が前面に出るのは、本意ではないはずだ。常日頃かから模範的な行動を継続した上で、大会結果が伴い、21世紀枠として選出された流れであることを理解する必要がある。高校球児の見本となる言動、プレー。田辺高はさわやかなスタイルを甲子園で披露するはずだ。

文=岡本朋祐
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