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昨季一軍出場なしも…「中日の救世主」と期待されるセンス抜群の若武者は

 

開幕前に光り輝くも……


昨年はケガで一軍出場なしに終わった田中。今年こそ、ブレークする


 中田翔中島宏之上林誠知アレックス・ディカーソンと即戦力の選手たちを獲得し、球団史上初の2年連続最下位に沈んだ屈辱からの逆襲を誓う中日。得点力アップが大きな課題だが、上位浮上に必要な要素はそれだけではない。ポイントを握るのが二遊間だ。

 昨季は龍空オルランド・カリステ石垣雅海、ルーキーの村松開人福永裕基が起用されたが、レギュラー定着には至らなかった。阪神を退団した山本泰寛、ドラフト2位で津田啓史(三菱重工East)、3位で辻本倫太郎(仙台大)と二遊間を本職とする選手を獲得。現有戦力に奮起を促す意味合いもあるだろう。そして、この熾烈な争いに強い気持ちで割って入る選手がいる。ルーキーイヤーの昨年は故障からのリハビリで一軍出場なしに終わった田中幹也だ。

 昨年の開幕前に最も光り輝いた新戦力だった。亜大からドラフト6位で入団。俊足を生かした軽快な守備は菊池涼介(広島)を彷彿とさせたが、打撃でもアピールしていた。一時はオープン戦首位打者に躍り出るなど、8試合出場で打率.333をマーク。9本の安打のうち、二塁打が2本、三塁打が2本と長打が目立った。鋭いスイングからライナー性の打球が外野の間を割る。DeNA東克樹から中前打、エドウィン・エスコバーから二塁打を放つなど打撃内容も濃かった。開幕スタメンが確実視されたが、3月19日の楽天戦(バンテリン)で一塁にヘッドスライディングで帰塁した際、右肩を脱臼するアクシデントで途中交代。「右肩鏡視下バンカート修復術」を受けて長期離脱した。リハビリに時間を費やし、ウエスタン・リーグで実戦復帰したのは9月。一軍昇格は叶わなかった。

「想定外のケガはチームにとっても大きな痛手だった。実戦向きで、攻守にセンスが光る。一軍で十分にやれる選手です。対応能力が高い点も評価できる。今年は二塁のレギュラーを十分に狙えるでしょう。田中が一本立ちするような活躍をすれば、攻守でプラスアルファは大きい」(スポーツ紙記者)

 リハビリ中に心が折れなかったのは、大きな試練を乗り越えた過去があるからだろう。東海大菅生高で1年夏から遊撃手の定位置をつかみ、2年夏の甲子園でベスト4進出。名門の亜大に進学後も1年春のリーグ戦から二塁で出場して主力として活躍していたが、3年夏に体調に異変が。国指定の難病「潰瘍性大腸炎」で大腸全摘出の手術を受けた。約3カ月間の入院生活を送り野球人生の危機を迎えたが、4年春のリーグ戦で本格的に復帰。リーグタイ記録の1試合6盗塁を決めるなど鮮やかに復活してリーグ優勝に大きく貢献し、大学選手権でも20年ぶりの大学日本一に輝き、MVPを受賞した。

尊敬する選手が良きお手本


大卒2年目の13年にブレークした菊池


 昨年は悔しい結果に終わったが、ケガで不可抗力の部分がある。前を向くしかない。田中が尊敬する菊池の歩んできた道が良きお手本になる。大卒1年目の12年は63試合出場にとどまったが、翌13年に141試合出場で打率.247、11本塁打、57打点、16盗塁をマーク。リーグトップの50犠打と「つなぎ役」として不可欠な存在になった。二塁の広い守備範囲と華麗なグラブさばきは他球団の選手の話題になるほどで、ゴールデン・グラブ賞を初受賞。22年まで10年連続受賞は二塁部門で歴代最長記録だ。侍ジャパンでも活躍し、好守を連発した17年のWBCでは海外メディアから「魔法使い」と称された。

 田中は大学4年時に難病から復帰した際、「つらい思いをした分、野球を心の底から楽しみたい。結果を出して貢献していきたい」、「自分があきらめずに取り組んで、結果を残せば、病気で苦しんでいる人にも勇気を与えられると思います。頑張っていきたいです」と週刊ベースボールの取材で語っている。

 病気もケガも今後の人生で大きな糧になる。今季は完全復活を果たし、田中幹也の名前を轟かせる。

写真=BBM
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