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【大学野球】「監督と選手」から「監督とコーチ」の関係に 駒大苫小牧高で栄光をつかんだタッグが駒大で復活

 

「あうんの呼吸がある」


駒大の新監督となった香田誉士史氏[左]をサポートするのは、駒大苫小牧高時代の教え子・林裕也コーチ[右]だ[写真=BBM]


 19年ぶりに同じユニフォームを着た。立場は「監督と選手」の関係から「監督とコーチ」になった。

 2月1日から母校・駒大を指揮する香田誉士史監督は言う。

「高校時代は『裕也』。今は『林コーチ』。大倉さん(孝一前監督)と林コーチが作り上げてきた精神がある。寮生活からも学生として、学生らしさが、確立されている。練習でも頑張る、盛り上がる、激励しよう、という姿勢。日々『素晴らしいな』と見ています。伝統ある駒澤大学野球部を大倉さんから引き継いで、その思いと伝統を守り、築いていきたい。林コーチは学生から信頼され、人望が厚い。節目では、厳しいことを言う。姿、形は高校時代と変わっていない。あうんの呼吸がある」

 恩師であり、指揮官を支えるのは、2019年からコーチとして尽力する林裕也コーチである。駒大苫小牧高では香田監督の薫陶を受け、04年夏の甲子園で北海道勢初制覇。二塁手の林は横浜高との準々決勝でサイクル安打を達成した。05年夏は主将として夏連覇を遂げた精神的支柱だ。社会人野球・東芝で9年プレーし、母校での指導も6年目となった。

「経験値は香田監督に遠く及びませんが、5年間、学生を見てきたことを伝えることはできる。試合中、サインを出すときに、一つの手助けになればと思います。香田監督の手の届かないところを、サポートしていきたい」

 駒大は昨春、東都大学一部リーグ戦で最下位。二部優勝・東洋大との一部二部入れ替え戦に連敗し、二部に降格していた。秋は二部優勝。東洋大との入れ替え戦を2勝1敗で制し、1シーズンで一部に返り咲いていた。すでに、大倉前監督は水面下で大学側へ辞意を表明。次期監督として香田氏の話が進んでいることは、林コーチの耳にも入っていた。

「(恩師の就任は)素直にうれしいですけど、緊張です(苦笑)。駒大苫小牧高でのイメージが強いですから……。香田監督が西部ガスの監督時代(18〜23年)、都市対抗出場時に駒大グラウンドを練習会場にすることがあり、話はさせていただいていました」

香田監督との最大の思い出


 2月1日、大学側から監督就任が正式に発表された。香田監督は1月21日から準備段階としてチームに合流していたが、本格合流後の練習初日は違う。午前8時30分のスタート前。グラウンド入口で香田監督を待つ林コーチの表情は、引き締まっていた。

「初めて紅白戦でベンチ入りしましたが、学生たちの顔、動きは明らかに違いました。香田監督の発信力。言葉にも引き付けられます」

 林コーチの高校時代、香田監督との最大の思い出は、3年夏の南北海道大会だという。

「3年間、会話した記憶はあまりないんです(苦笑)。最後の夏、打撃不振だったんです。そこで、香田監督が『一番と三番、どっちが良い?』と、打順を自分に決めさせてくれたんです。一番、しんどい場面で声をかけくれました。『一番が良いです』と希望を出したんですが、以降はリラックスしてプレーすることができました。人を見て、ポイントで絶妙なアドバイス。指導者は、選手と接するタイミングが大事です。初日の練習を見た限りでも、学生への『愛情』を強く感じました」

 香田監督は駒大合流から1週間あまりで、100人近い部員全員の名前と顔を覚えた。

「私はここに入ったばかりですが、学生たちは今春に向けて、動き出している。競争の中にいるグラウンドで、(名前と顔は)失礼のないようにしたい」(香田監督)

 駒大苫小牧高で栄光をつかんだ2人のタッグが復活した。春のリーグ戦開幕まで約2カ月。時間は限られているが、林コーチの献身的な支えもあり、香田監督の学生掌握とチームづくりは急ピッチで進んでいる。

文=岡本朋祐
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