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社会人野球リポート

【社会人野球】ドラフト解禁となる大卒2年目にプロ入りを目指すJR東日本・高山陽成&海崎雄太

 

プロに進んだ先輩に刺激を受けて


JR東日本の150キロ右腕・高山[左]と遊撃手・海崎はドラフト解禁となる大卒2年目でのプロを志望する[写真=BBM]


 2024年の社会人野球のシーズンインは3月9日に開幕するJABA東京スポニチ大会だ。球春到来を前に、JR東日本は2月13日からの鹿児島キャンプ、薩摩おいどんカップでチームとして1年間戦う下地をつくっていく。

 社会人の大卒入社選手のドラフト解禁は、2年目である。150キロ右腕・高山陽成(明大)は「3.9」に照準を合わせて、1月中旬からブルペンで捕手を座らせ、80〜90球の投球練習を続けている。「温暖な鹿児島では出力を上げ、150〜200球を2回は投げていきたいと思います」と意欲的だ。「JR東日本を勝利へと導いた上で人一倍、プロへ行きたい思いが強い」と勝負をかけていく。

 作新学院高では2年春から3季連続で甲子園出場。3年夏はエースとして8年連続の代表を手にしたが、栃木大会準決勝で痛めた右肘痛の影響で、大阪桐蔭高との1回戦は2回1失点で降板した(チームは1対3で敗退)。明大でのリーグ戦デビューは4年春の遅咲き。3年間の下積みを経て、最終学年は春秋連覇に貢献し、明治神宮大会で優勝。4年秋のリーグ戦では、リリーフで初勝利を挙げた。

「4年春の東大1回戦で初めて神宮のマウンドを踏んだんですが、その登板をきっかけにして、JR東日本からお話をいただきました。卒業後も野球を続けたい思いはありましたが、一般の就活もしていない。不安の日々を過ごしていましたが、拾っていただいた形です」

高山は作新学院高、明大と名門チームを歩んできた[写真=BBM]


 入社1年目は都市対抗14年連続出場に貢献。左わき腹を痛め、4強に進出した東京ドーム本戦での登板はなかったが「あっという間に過ぎた」と、充実の1年を過ごした。投球のレベルアップはもちろんのこと、フィールディング、けん制などの周辺部分も磨かれた。

 作新学院高では2学年上の今井達也(西武)、明大では3学年上の森下暢仁(広島)、伊勢大夢(DeNA)、高校通じて先輩の入江大生(DeNA)と一流投手を間近で見てきた。また、明大の同級生で主将を務めた村松開人(中日)は「人格者。尊敬しています。一ファンとしても、応援している」と明かす。

「プロの世界の厳しさは分かっているつもりです。社会人野球の厳しさも経験し、その中で突出した結果を残さないと、プロで活躍することはできない」。今季の抱負を語った。

「JR東日本というチームが大好きなんです。指導者、先輩、同期に恵まれ、1年を過ごしてより感じました。このチームで勝って、都市対抗制覇を手にするために腕を振りたい」

かけがえのない二人の恩師


海崎は福岡県出身。埼玉栄高で心身を磨き、法大でも神宮で躍動した[写真=BBM]


 攻守の中心選手として期待されているが遊撃手・海崎雄太(法大)である。1月4日。練習始動日のミーティングで宣言した。「入社2年目ですが、チームをけん引していく自覚を持ち、声がけをしていきたいと思います」。今季から主将が入社3年目の山内慧(専大)となり、サポートする姿勢を示したのだった。

 海崎にはかけがえのない二人の恩師がいる。中学時代に在籍した大野城ガッツ・藤田正美監督(故人)からは「野球を通した人間形成」を学んだ。高校入学に際しては、藤田氏と法大OB同士で、九州国際大付高の監督時代からつながりの深かった若生正廣氏(故人)が指揮する埼玉栄高に進学した。ここでも、野球の技術以前の礼節を徹底され、人としての基盤が磨かれた。技術的な部分では「バント、走塁、カバーリング。試合に臨むにあたっての9カ条は今も、野球選手としての原点です」と、基礎基本がたたき込まれている。

 プロ注目右腕・米倉貫太(Honda→Honda熊本)とともに、福岡から勝負をかけたが、3年間で甲子園の土を踏むことができなかった。若生氏の教えが正解であったことを証明するため、進学した法大では身を粉にして動いた。鉄壁の守備力を武器に東京六大学リーグ戦に49試合に出場して25安打、1本塁打、14打点。4年時は副将を務めた。

「幼少時からプロ野球選手の夢を持っていましたが、現実的なものとして、考えるようになったのはJR東日本に入社して以降です」

 法大時代は「守備の人」のイメージが強かったが、社会人では「打てるショート」としての評価を高めている。JR東日本で抜本的に打撃を改良。石川修平コーチ(法大)との二人三脚でスイング軌道を修正すると、実戦で結果が出た。1年目からレギュラーに定着。都市対抗予選では4試合で7打点を挙げ、14年連続出場に貢献した。4強に進出した本戦では全4試合に先発出場も1安打。「対応力に欠け、引き出しの少なさから、工夫することができなかった」。守備面では準決勝で対戦したトヨタ自動車の二遊間(二塁手・佐藤勇基、遊撃手・和田佳大)の精度の高さに衝撃を受けた。「守り勝つ野球を体現しているチーム。1対3というスコア以上の差を感じた」。2年目は守備のさらなる強化をテーマに掲げ、打力アップにも努めている。

「何としても、このチームで勝ちたい。まずは3月のスポニチ大会を取りにいくことは、チーム内でも浸透しています。全員の熱い思いを結集させれば、実現できる」

 海崎は勝負を決める場面で存在感を発揮したい一方で「影でチームを勝たせられる選手になりたい」と、進塁打など、攻守において「これがあったから勝てた」と、記録に表れない細かいプレーで尽力していきたいという。「チームが勝ち上がっていけば、自ずと結果はついてくる」と、遊撃手部門での社会人ベストナインを虎視眈々と狙いに定める。

 JR東日本に愛着がある大卒2年目コンビ。2人がチームの空気を変え、2011年以来2度目の都市対抗制覇、黒獅子旗を目指す。

文=岡本朋祐
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