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最速160キロ昨季一軍登板なし…「才能はメジャー級」右腕は復活できるか

 

覚醒が待たれる背番号40


22年は一軍で10試合、昨年は登板なしに終わっていた杉山


 昨季一軍登板なしに終わったが、今年の春季キャンプで一軍(A組)メンバーに選ばれたことが期待の大きさを物語っている。覚醒が待たれるのが、ソフトバンクの最速160キロ右腕・杉山一樹だ。

 身長193cmの長身から投げ下ろす直球は150キロを軽く超え、縦に鋭く落ちる軌道のスライダーを織り交ぜて三振の山を築く。並外れた身体能力で「才能はメジャー級」と評されていた。エースとして活躍した千賀滉大(メッツ)の後継者と目されていたが、なかなか殻を破れない。昨年は一軍登板なし。2月の春季キャンプで「右肘内側側副じん帯損傷および浅指屈筋損傷」の診断を受け、約4カ月後に三軍で実戦復帰したが、その後の登板で右足首靭帯を部分断裂と不運が続く。7月の四軍戦で復帰登板したが、本来の状態を取り戻せず、プロ5年目で初めて一軍で登板機会がなかった。

一番の課題は制球力


 速い球を投げられるのは稀有な才能だ。一昔前と比べて投手の平均球速が上がり、150キロを計測することは珍しくないが、160キロを投げられる投手はまだまだ限られる。杉山は21年5月11日のロッテ戦(PayPayドーム)で自己最速の160キロをマークしている。

 週刊ベースボールのインタビューで、球速へのこだわりについて質問が及ぶと、「いや、昨年あたりからまったくなくて。いつかスピードが上がっていくんだろうなと、そういう楽な気持ちで投げていました。160キロ投げたときも、自分の感覚的には……(笑)。そのあとのランナーを出してからマーティンに投げた初球(155キロ)のほうが、自分にとっては手応えがありました」と振り返った上で、「持ち球全部、速いボールで勝負できたらなとは思っているんですよ。僕の場合は、緩急を使うよりもそっちのほうがバッターからしたら嫌なんじゃないかって。変化球も全部150キロ近い球速だったら、狙い球も絞りづらくなる」と思い描く投球スタイルを語っていた。

 だが、身体能力の高さに結果が伴わない。本格的に先発転向した22年は10試合登板で1勝3敗、防御率6.80。開幕3戦目の先発に抜擢されるなど藤本博史前監督の期待は大きかったが、安定感を欠いた。一番の課題は制球力だ。目の覚めるような直球で三振の山を築いたかと思えば、次のイニングは制球が荒れてストライクを取ることがままならなくなる。本人も一軍定着に向け、自覚していた。

「変化球のコントロールが一番ですね。これからもずっと付きまとってくるんじゃないのかな……。自分がなりたい投手像というのがあって、そのためにはコントロールが必須。若いころは多少アバウトでもいいのかもしれませんが、目指すべきところにたどり着くには、思ったところに正確に投げられるようにならないと」

今年は再び救援で勝負


 目標に挙げる千賀も、決して制球力が高い投手ではなかった。19、20年と2年連続最多奪三振のタイトルを獲得したが、与四球数も2年連続でリーグワーストだった。ただ、杉山との大きな違いは修正能力だ。四球を出しても大崩れせず、失点を許さない。新型コロナウイルスの影響で120試合制だった20年は11勝6敗、防御率2.16で最多勝、最優秀防御率のタイトルを獲得。FAでメッツに移籍した昨年は8年連続2ケタ勝利となる12勝をマークした。

「千賀2世」と期待された杉山だが、今年で27歳を迎える。若手と言える立場ではなくなり、結果を残さなければいけない。今季は救援で再び勝負する。ソフトバンクは救援陣の柱として活躍してきたリバン・モイネロ、昨年46試合登板で13ホールドを挙げた大津亮介が先発に回る。練習試合、オープン戦で好投を続ければ救援で一軍の切符をつかめる。「未完の大器」にかかる期待は依然として大きい。大輪の花を咲かせられるか。

写真=BBM
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