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門別啓人だけではない? 阪神で「大ブレークの可能性」秘めた22歳左腕は

 

広島との練習試合で好投


貴重な左腕としてチームに欠かせない存在の及川


 阪神の先発ローテーション入りを狙う左腕は、高卒2年目の門別啓人だけではない。今年の春季キャンプで存在をアピールしているのが、高卒5年目の及川雅貴だ。

 2月18日の広島との練習試合(コザ)で6回から救援登板し、成長の跡を見せた。先頭の韮沢雄也を二飛に仕留めると、続く林晃汰を外角いっぱいに決まる直球で見逃し三振、二俣翔一を遊ゴロに抑えた。7回も三者凡退と完ぺきな内容。伸びのある直球を主体に、新球のカットボールも効果的だった。

 救援でシーズンを回った昨年は33試合登板で3勝1敗7ホールド、防御率2.23の好成績でリーグ優勝、38年ぶりの日本一に貢献。直球とスライダーのコンビネーションでイニング数の36回1/3を上回る40三振を奪った。課題は明確だ。対左打者は被打率.162と抑え込んでいるが、対右打者には被打率.296と痛打を浴びる場面が見られた。右打者から逃げるツーシームを磨くとともに、懐に食い込むカットボールがモノになれば投球の幅が広がる。

先発への思いも


 勝負の分岐点に登板する救援で献身的な姿勢を見せる一方、先発で投げたい気持ちは持っている。21年は救援で39試合登板し、2勝3敗10ホールド、防御率3.69をマーク。矢野燿大前監督が「井川級になれる」と絶賛した左腕は、翌22年2月に週刊ベースボールのインタビューでこう語っている。

「昨季初めて中継ぎを経験したからこそ、先発で生かされることもあると思います。今までは先発したときは、何気なく投げていた部分もありました。でも中継ぎでは、打者が打ってきそうな状況で、ストライクからボールになる球を投げて反応を見る、というようなことも勉強しましたので、先発をして各イニングでもピンチの場面でも、そういうことを生かしていきたいです」、「もともと入団当初から先発投手で頑張りたいという思いもありましたし、二軍のときから先発としての調整をしてきました。一軍でも先発としてやっていきたいと強く思っています」

 先発に挑戦した22年だったが、脇腹を痛めた影響で1試合登板のみ。岡田彰布監督が就任した昨年は先発陣の層が厚いチーム事情で、救援に再び配置転換された。阪神OBの野球評論家・藪恵壹氏は昨年のブレーク候補として及川の名前を挙げていた。
 
「2021年の後半から中継ぎで活躍しましたが、同期の西純矢に活躍を持っていかれました。持っているものは素晴らしく、体は細いのに芯の強さを感じる投手です。個人的には、足を上げてから踏み出していくときに、軸足となる左足のかかとがズレるため、つま先が外側へ向いてしまうので、パワーが十分にボールに伝わっていません。ここが改善されたら、中継ぎどころか、先発として活躍できる可能性、ポテンシャルを秘めている投手です。現在の阪神投手陣の若手の中で、一番化ける可能性がある投手だと思っています」

連覇への貴重なピース


 横浜高で3度甲子園に出場し、阪神でチームメートになった西純、佐々木朗希(ロッテ)、奥川恭伸(ヤクルト)とともに、「高校BIG4」と形容されていた。好不調の波が激しいのが課題だったが、一軍で登板を重ねて状態が悪いなりに打者を抑える術を身に付けつつある。

 12球団でトップクラスを誇る先発ローテーションに入るのは、容易ではない。昨季MVP、最優秀防御率を獲得と大ブレークした村上頌樹、抜群の安定感を誇る伊藤将司、本格派右腕の才木浩人は確定で、2年連続最多勝の実績を持つ青柳晃洋も順調な仕上がりを見せている。門別も今後の実戦登板で結果を残せば、この枠に入ってくる可能性が高い。調整が少し遅れている大竹耕太郎西勇輝も開幕までに合わせてくるだろう。さらに、来日2年目のジェレミー・ビーズリー、ドラフト1位右腕の下村海翔も控えている。

 想定外のアクシデントに見舞われる事態も考えると、先発要員は何人いても困らない。救援にも対応できる22歳の及川はリーグ連覇を狙う中で、重要なピースになることは間違いない。

写真=BBM
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