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DeNA新加入の長距離砲に、他球団から「吉田正尚と重なる」高評価が

 

スイングスピード+コンタクト能力


今季、ドラフト6位でDeNAに入団した井上


 鋭い打球が沖縄の空を切り裂く。DeNAの春季キャンプで目立った新戦力が、ドラフト6位の井上絢登だ。

 他球団のスコアラーはこう分析する。

オリックスに入団したときの吉田正尚(レッドソックス)と重なります。体格に恵まれているわけではないけど、スイングスピードが速い。ただ、振るだけでなくコンタクト能力も高い。強肩で足も速いので実戦向きの選手だと思います」

 一軍で活躍したいという執念が見える選手だ。途中出場した2月15日の練習試合・日本ハム戦(宜野湾)で8回にヘッドスライディングで三塁内野安打をもぎ取る。17日の中日戦(北谷)では「四番・三塁」に抜擢された。4打数無安打に終わり、21日の第5クールからB班(ファーム)に合流が決まったが、首脳陣の評価が低いわけではない。宮崎県で実戦を重ねて試合感覚を研ぎ澄ませば、一軍に再昇格の可能性が十分にある。

三拍子そろった選手として


 夢見ていたNPBの舞台にたどり着く道は、険しかった。福岡大で1年からレギュラーをつかみ、九州六大学リーグで打点王を獲得するなど大学通算10本塁打を記録。プロ志望届を出したが、指名漏れとなった。四国アイランドリーグplusの徳島に入団し、1年目の2022年に打率.246、13本塁打、41打点で本塁打王、打点王を獲得。だが、吉報は届かなかった。

 NPBに必要とされる資質は何なのか――。井上は考え方を変えた。

「やっぱり一芸じゃないんで。三拍子のうち、二つが100点ぐらいの高得点まで持っていかないと」

「長打やホームランをいっぱい打てば行けるかな? って思ってたんですけど、それでは(指名され)ないなっていうのがはっきり分かったので」。思考を整理し、走攻守三拍子そろった選手として数字を出すことにフォーカスした。

 昨年は打率.312、14本塁打、39打点、14盗塁を記録。出塁率.424、OPS.993もリーグトップの数字で年間MVPを獲得した。2年連続で打点王、本塁打王の2冠を獲得したこと以上に、打率が大幅に上がったことに価値があった。守備でも本職の外野だけでなく、三塁に挑戦。守れるポジションが増えたほうが、起用法の幅が広がる。DeNAがドラフト6位で指名したのは、三塁の高い守備力も大きな理由の一つだった。

よきお手本となる先輩


 同じ野手でプロ入りしたチームメートのドラフト1位・度会隆輝に注目が集まるが、プロは結果がすべての世界だ。良きお手本となるのが、首位打者に2度輝くなど球界を代表する安打製造機として知られる宮崎敏郎だろう。井上と同様にドラフト6位で入団した当時は目立つ存在ではなかったが、プロ入り後に卓越したバットコントロールとパンチ力で三塁の定位置をつかんだ。シーズン打率3割を6度マークし、昨季は打率.326と2度目の首位打者を獲得。35歳とベテランの域に入ったが、衰えはまったく見られない。

 広角に安打を量産する打撃技術について、昨年6月に週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っている。

「打つ方向を選択できることが必要だと思うんですよね。困ったときにはこっちに打つとか、対応できる幅を広げたり、引き出しを増やしたりすることなのかなと」

「ただ特に意識して、均等に打ち分けようとしているわけではないんです。とにかく気をつけているのは、自分のスイングの中で、ボールに対して強引にならないようにすること。ベース板を通るボールに対して、外の球を引っ張るとかはないようにしていますね。もちろん、そういうケースも出てくることはありますけど」

 DeNAに入団時は中村紀洋、その後はアーロム・バルディリスが三塁を守っていたため一軍定着できなかったが、レギュラーが空白になった16年に熾烈な競争の中で結果を残し、スター選手への階段を駆け上がった。井上も存在価値を証明するには、グラウンド上でアピールし続けるしかない。ハングリー精神にあふれた男は、今月23日に24歳の誕生日を迎える。人生最高の1年にするための挑戦が始まる。

写真=BBM
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