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【社会人野球】「公式戦無敗」を目指すENEOS チームスローガン「LOVE BASEBALL 勝、勝、勝」に込められた思い

 

野球漬けの13日間を過ごして


ENEOS・大久保監督は都市対抗で歴代最多4度の優勝を誇る。2024年シーズンも勝利だけにこだわっていく[写真=BBM]


 社会人野球のシーズン幕開けとなるJABA東京スポニチ大会は、3月9日に開幕する。ENEOSは2月6日から18日まで「キャンプ」という名の「強化練習」を行った。活動拠点であるENEOSとどろきグラウンド(神奈川県川崎市)で3勤、5勤、3勤で2日の休養を挟んでの猛練習。早朝から夕方まで、まさしく野球漬けの13日間を過ごした。

 2月24日からは、いよいよ対外試合(オープン戦)がスタートする。本格的な実戦を前にして、2019年12月から指揮する大久保秀昭監督は、全体ミーティングでこう伝えた。

「(公式戦は)全部、勝つぐらいの気持ちで挑んでください!! とあらためて言いました。どこのチームも、勝利を目指している。ウチが(他のライバルチームと比べて)抜けているか?  と言えば、そうではない。全部勝つには、どういう過ごし方をしたら良いのか。私とスタッフでは、共有できている。実際にプレーするのは選手。全員が同じ方向に向いていかないといけない。練習では、悲壮感を出してもいい。高みを目指して追い込み、ゲームではハツラツした全力プレーを展開する。『ゲームのほうが楽』というぐらいに、気持ちを高めていかないと勝負はできない」

 グラウンドに併設するクラブハウス(寮)ではコロナ禍以来となる、門限(23時)を設けた。「日々、充実した規則正しい生活を送る。決して乱れているということではありませんが、もう一度、原点に戻ろうということです」。大久保監督の目は、さらに鋭くなる。

 大久保監督は第一次政権の2008、12、13年の都市対抗、12年の日本選手権優勝へと導いた名将である。14年12月からは母校・慶大を率い、東京六大学リーグ優勝3度。明治神宮大会を制した19年11月に勇退し、同12月にENEOS監督に復帰。愛着のある会社のため、名門再建へ尽力し、22年には9年ぶり、同社の持つ大会最多記録を更新する12度目の都市対抗制覇を遂げた。指揮官として、4度の黒獅子旗奪取は歴代最多。同年の都市対抗では連覇へ導いた13年以来、史上初となる個人2度目の小野賞(目覚ましい活躍をしたチーム、個人が対象)を受賞した。

 都市対抗王者は、次年度の同大会では「推薦出場」の権利があり、予選が免除される。ENEOSは昨年、本大会2回戦敗退。もう一つの社会人二大大会である社会人日本選手権は準々決勝敗退と、悔しい1年を過ごした。今年は屈指の激戦区である都市対抗西関東予選が控える。大久保監督は勝負師の血が騒ぐ。

「もちろん『予選免除』に越したことはありません。この予選に向けた独特の緊張感。ワクワク感も、同居しているんです。たまらない(苦笑)。スイッチの入り方が違います」

昨年から大きな3つの変化


 昨年のチームから、大きな変化が3つある。ヘッドコーチに大久保監督の「愛弟子」である宮澤健太郎氏(明大)が就任した。06年の大久保監督の就任に合わせて主将に就任し、12年まで7年間の大役を務めた。都市対抗連覇を遂げた13年限りで、11年の現役選手を引退。社業10年を経て、現場に戻ってきた。大久保監督の野球を、最も知る男である。

「あれだけのメンタル、熱いハート、社会人野球で関わった中でも1、2位の選手。企業人・宮澤、野球人・宮澤のマネジメント能力に期待しています。当然、次の世代へとつないでいく中でも、今年1年、勝負をかける」

 主将には20年から4シーズン務めた川口凌(法大)から、入社3年目の丸山壮史(早大)にバトンが渡った。丸山は入社2年目の昨季、初の社会人ベストナインを受賞。侍ジャパン社会人代表においてアジア競技大会で3位、アジア選手権では優勝に貢献した。

「川口は入社2年目で『チームを変える!』と手を挙げてくれ、よくやってくれました。丸山はジャパンでその地位を確立しつつある。チームの顔として、期待をかけています」

 3つ目は、クリーンアップ2人の穴である。昨季まで11年プレーした左の強打者・山崎錬(慶大)が現役を引退。度会隆輝(横浜高)が高卒3年目の昨年10月のドラフト会議でENEOSの地元・横浜DeNAからドラフト1位指名を受けた。新たな中軸として、大久保監督が待望するのは実績十分の丸山に加えて、大卒入社2年目の山田陸人(明大)、同期入社の片山昂星(青学大)だ。強化練習では相当なバットスイングを敢行しており、量と質はどこにも負けない。

 2024年のチームスローガンは「LOVE BASEBALL 勝、勝、勝」。同社野球部によれば「LOVE BASEBALL」は「野球をとことん愛し、追求すること。また、野球部が置かれているすべての環境に感謝の念をもって、大きな視点で野球に励む思い」とあり、「勝、勝、勝」は「今シーズンも変わらずに勝つことに対して貪欲にこだわり、1年1年チームとしてステップアップしていく、勝ちをひとつずつ積み上げていく姿勢」という意図がある。

 目標は言うまでもなく、2年ぶりの都市対抗、12年ぶりの社会人日本選手権と「社会人二大大会連覇」である。3月9日に開幕するJABAスポニチ大会で優勝すれば、社会人日本選手権の出場権を手にすることができる。ENEOSは貪欲に「公式戦無敗」を目指して、一戦一戦を全力で駆け抜ける。

文=岡本朋祐
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