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【高校野球】新基準金属製バット製造工場見学 対外試合解禁を前に理解を深める場に

 

2024年シーズンから完全移行


日本高野連は2月27日、「新基準金属製バット製造工場見学」を実施。理解を深める場となった[写真=BBM]


 日本高野連は2月27日、「新基準金属製バット製造工場見学」を神奈川県横浜市内にある日本シャフト(株)横浜工場で実施した。

 冒頭では主催者である日本高野連から「金属バットの変遷、新基準バット導入の目的、概要」について説明があった。1974年春のセンバツ後の都道府県大会から金属バットが導入されて以来、日本高野連には「加盟校の負担を軽減する」「木製バットの代用」との二つの基本理念がある。

 次に製品安全協会から「金属バットの安全基準の概要、従来基準からの変更点」などについてレクチャー。そして、全日本バット工業会が「金属バット設計における考慮すべきポイント、製品寿命」などについて解説した。

 2年間の猶予期間を経て、2024年シーズン(センバツ大会、都道府県大会)から「新基準バット」に完全移行する。打球部は従来の3ミリから4ミリと肉厚になるため、トランポリン効果を抑制。また、最大径が64ミリと3ミリ細くなるため、木製バットに近い形状に。各種試験により、反発性能は5〜9パーセント、打球初速は約3.6パーセント減少。導入のきっかけになった投手の障害予防の推進、投手を守る効果が期待される。

 バットの寿命については、使用頻度、状況によっても異なるため、一概には言えないが、肉厚となった打球部の耐久性は、従来品よりも高い。新基準バットでは打球部だけでなく、先端付近、テーパー付近(ブランドマークよりも手前側)の消耗に目を向ける必要がある。バット先端部のキャップが外れた際が、製品寿命なることも想定している。音響対策については、打球音が高くなる傾向にあり、先端キャップに加えて、バットの内部に消音材として、スポンジを挿入するメーカーもある。

 現場の声も聞かれた。小倉全由氏(日大三高前監督、侍ジャパンU18高校日本代表監督)が指導者から見た新基準バットについて、使用上の留意事項をグラウンド目線から、今後の指導方法についても言及した。

実際に工場を見学し、製造過程を見て回った。材料は「アルミ」である[写真=BBM]


スウェージ工程[バットの形を作る。写真=BBM]


ネジヘッド旋削加工[キャップ、グリップエンドの取り付け部を作る。写真=BBM]


研磨工程[きれいに磨き上げる。写真=BBM]


組立工程[ヘッドキャップ、グリップエンド、グリップテープを巻いて完成。写真=BBM]


 説明会の後は、製造工場を見学。大きく分け、8つの工程の説明を受けた。「特殊な材料を使っている」(関係者)ことから、国内にある金属バット製造工場は2カ所(横浜、岐阜)だという。その他は台湾、中国など海外の工場で製造されているのが現状だ。

 1日に「数百本」(関係者)製造され、1本の金属バットが製品となるまでには「約1カ月」(関係者)を要する。同工場では「両手ぐらい」(関係者)の各国内メーカーから委託され、製造しているという。メーカーによって形状、バランスも異なる。基準内でのそれぞれのオーダーを応える形で、製造している。もちろん、現時点が完成形ではなく「現場、お客様からの要望を受けて改良していくことになる」(関係者)と、技術開発に努めていくという。

 従来の金属バットは2万5000円から3万円だったのに対して、新基準は3万〜3万5000円とさらに高価となった。「(新たな)工程が増えたため、その分、費用がかさみ、また、時勢によるところが大きい」と、高校生が簡単に手を出せる道具ではない。日本高野連では学校、部員の経済的負担を減らすため、全加盟校に3本ずつを配布した。

 日本高野連には「部員数が減少傾向にある中、より部員たちの安全、安心なプレー環境を整える取り組みとして、今回の金属製バット新基準への意向を位置づけている。ひとりの部員を大切にする高校野球を目指していく」という根底がある。

 3月2日からの対外試合解禁を前に、理解を深める場となった。センバツ大会は3月18日の開幕を控える。日本高野連・井本亘事務局長は「高校野球も次のステージ、次のステップにいくかと思っている」展望を語った。

文=岡本朋祐
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