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大ブレークの予感…阪神の若武者に「吉田正尚2世」の高評価が

 

春季キャンプで野手MVP


実戦で内容のある打撃を示した前川


 リーグ連覇を狙う阪神で、岡田彰布監督から春季キャンプの野手MVPに指名されたのが、プロ3年目の前川右京だった。

 キャンプ期間の対外試合では6試合で8打数2安打、打率.250と際立った成績を残しているわけではない。ただ、首脳陣はこの時期に打席の内容を重視する。際どい球を見極めて4四球を選んで出塁するなど、追い込まれても簡単に打ち取られない。フリー打撃でも打球の速さは目を見張るものがあった。

 他球団のスコアラーは、「打球の質が変わりましたよね。ラインドライブだったのが、一直線に伸びる打球が増えて飛距離も伸びている。打撃スタイルで吉田正尚(レッドソックス)と重なります。パンチ力がありますが長距離砲というより、打率3割、20本塁打を安定してマークするタイプ。高卒3年目でこの打撃能力はずば抜けていると思います」と分析する。

「前川にもそらチャンスは十分にあるよね」


 岡田監督は週刊ベースボールのコラムで、前川について言及している。

「若い芽がどんどん出てくる。それは野手も投手も同様だ。ここであらためてタイガースのアマスカウト陣の眼力の確かさを思う。ホンマ、たいしたもの。ここまで若い選手が台頭してくるとは。スカウトはそれをイメージしていたんだろうな。オレはキャンプの期間、若い選手には『無理にアピールする必要なし』と伝えている。そら選手は必死よ。何とか目立って一軍へとか、レギュラーにとか考えている。でもそこで無理するのが怖い。余計なアクシデントを呼ぶ危険性があるわけで、自分のできることをやればいい。ちゃんと見るべき人は見てるから。そんな中、結果を出してきたのが前川(前川右京)やろな。今年でプロ3年目。昨年も一軍で起用したけど、やっぱり壁はあったし、故障もあった」

「ただ取り巻く状況が前川の存在を大きく見せている。というのも昨シーズン、打線の構成は左バッターが多くて、右打者を必要とした。外野は近本(近本光司)のセンターは決まっていたが、レフト、ライトは右バッターで。これをオレは決めていた。すると今年、外野は右バッターが多くそろい、近本以外の左打者と言えば前川と島田(島田海吏)くらいになった。そういう条件下、内容が伴う成長を見せれば、前川にもそらチャンスは十分にあるよね」

外野の両翼でスタメン出場の準備


 一軍デビューを飾った昨季は33試合に出場、打率.255、7打点をマーク。6月に月間打率.358をマークし、7月以降は相手バッテリーの警戒が強まったことで快音が聞かれなくなった。8月2日に登録抹消以降は体調不良で実戦から遠ざかったが、大きな一歩を踏み出したことは間違いない。得点圏打率.409と勝負強さを発揮。戸郷翔征(巨人)に4打数2安打で打率.500、高橋宏斗(中日)に6打数3安打で打率.500、トレバー・バウアー(DeNA)に5打数2安打で打率.400と各球団のエースに強かったことも強いインパクトを残した。

 外野は左翼がシェルドン・ノイジー、右翼は森下翔太がレギュラーの最有力候補だが、完全に固まっているわけではない。前川は本職が右翼だが、今年の春季キャンプでは左翼で練習を積み重ねていた。外野の両翼でスタメン出場する準備は整えている。

 まだ20歳だが、レギュラーを獲得するのに早すぎる年齢ではない。阪神OBで「ミスタータイガース」の掛布雅之氏は高卒3年目の76年に122試合出場で打率.325、27本塁打、83打点をマーク。初の規定打席に到達し、ベストナインを初受賞した。阪神は大山悠輔佐藤輝明、近本光司と大卒、社会人出身の選手が活躍しているが、高卒野手のスター選手が久しく現れていない。岡本和真(巨人)、村上宗隆(ヤクルト)、万波中正(日本ハム)と他球団で高卒の強打者が打線の柱になっている。前川も阪神に不可欠な選手になれるか――。

写真=BBM
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