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佐々木俊輔、松原聖弥だけでない…巨人で身体能力が際立つ「ドライチの逸材」は

 

実戦で結果を残して


レギュラー獲得へ汗を流すオコエ


 ハイレベルな競争がチーム力の底上げにつながる。熾烈なレギュラー争いが繰り広げられているのが、中堅だ。ドラフト3位の佐々木俊輔、復活を目指す松原聖弥、一軍合流を目指す高卒2年目の浅野翔吾が有力候補に挙げられる中、この男が存在を強烈にアピールしている。移籍2年目のオコエ瑠偉だ。

 春季キャンプの初日は二軍で迎えたが、一軍2次キャンプ地の那覇から合流すると、与えられたチャンスで結果を残した。今年初の対外試合となった2月18日の韓国サムスン戦(那覇)では7回に左翼席へ特大アーチ。2月27日の練習試合・日本ハム戦(那覇)では4回に金村尚真の直球をバックスクリーン左へ運ぶ2ランを放った。長打だけでなくきっちり安打を放ち、小技を決めている。結果だけでなく内容や立ち振る舞いを重んじる阿部慎之助監督は、「すごく良いアピールしてくれていますし、守備でもカバーリングだったり、いつも以上にしっかりやってくれている。すごく頑張ってる」と高評価を口にしている。

 関東一高からドラフト1位で楽天に入団し、将来を嘱望されたが、一軍に定着でないまま年月が過ぎた。2022年は自己最少の6試合出場にとどまったが、気持ちを切らすことはなかった。イースタン・リーグでは48試合出場で打率.327、1本塁打、13打点、7盗塁をマーク。同年11月に行われた現役ドラフトで巨人への移籍が決まる。

「とにかく前向きでした」


 オコエは週刊ベースボールのインタビューでこう振り返っている。

「自分の場合はちょっと特殊かもしれないですけど、強気でいた部分もあったので。口には出していないですけど、『俺はもっとできるぞ』という内心はそういう気持ちがありましたから。昨年は一軍で6試合だけで、数字だけで見たら『あー』って言われてしまうような成績だったんですけど。ほとんどを二軍で過ごして、ドライチの吉野(吉野創士)君もいてチャンスが限られる中で、開幕から2カ月は打率5割をキープしたり、しっかりやることができていたので。たとえオフに戦力外になっても別のチームへのアピールになればという気持ちで、来年(23年)に向けてしっかり勉強しながら、最後まで腐らずに1年間やることができたからこそ、今があるのかなと思いますし、移籍が決まったときも、とにかく前向きでした」

 再起を誓った巨人で昨年は開幕一軍を勝ち取り、4月8日の広島戦から3試合連続マルチ安打。最高のスタートを切ったが、4月下旬から調子を落として5月上旬に登録抹消された。その後は強烈なインパクトを残せず、41試合出場で打率.235、2本塁打、6打点、1盗塁。満足のできる数字ではないが、短期間でも一軍で結果を残して手ごたえをつかんだ部分があるだろう。「もっとうまくなりたい」という向上心が自身を突き動かす。オフの自主トレでは坂本勇人に志願して弟子入りし、打撃を学ぶだけでなく、ハードなトレーニングで追い込んだ。

大きなモチベーション


 大切な家族に一軍で活躍している姿を見せたいという思いも、大きなモチベーションだ。オコエの祖父は巨人ファンであることで知られる。

「今のおじいちゃんの唯一の楽しみなんじゃないですかね(笑)。脳梗塞で倒れてからはほとんど寝たきりなんですけど、毎日のようにテレビで見てくれています。たまに怒られるんですよ。『何であそこで三振するんだ!』とか(笑)。スタンドで見ているお客さんと変わらないような声の掛け方をしてくれるし、客観的な意見としてすごく参考になったりもする。おじいちゃんには小さいころから野球を見に連れて行ってもらったりしていたので、今、野球ができている姿を見せられるのはすごくいいですね」と語っていた。

 ドラ1の逸材として注目されて9年が経ったが、26歳とまだ老け込む年ではない。開幕でスタメンを勝ち取るのは通過点。シーズンを通じてレギュラーで試合に出続ける活躍を見せれば、おのずと数字はついてくるだろう。

写真=BBM
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