週刊ベースボールONLINE

HOT TOPIC

巨人・吉川尚輝に強力なライバル 「優れた野球脳」の新戦力は

 

ユーティリティーでは収まらない能力


ドラフト4位ルーキーの泉口。内野の全ポジションを守り、守備能力は高い


 V奪回を狙う巨人で打撃好調のドラフト3位・佐々木俊輔、救援で好投を続けるドラフト5位・又木鉄平が注目を集める中、この新人も評価を高めている。ドラフト4位の泉口友汰だ。

 職人という言葉が良く似合う。本職は遊撃だがオープン戦で内野の全ポジションを守り、無失策を継続。打席でも選球眼の良さを見せ、広角に安打を飛ばす。コンタクト能力が高いだけでなく、直球を力強く引っ張れるパンチ力も魅力だ。大阪桐蔭高、青山学院大、NTT西日本とアマチュア球界のエリート街道を歩んできた男は与えられた役割をきっちりこなし、野球を知っている。「九番・二塁」でスタメン出場した3月13日のソフトバンク戦(PayPayドーム)では、6回一死一塁の守備で今宮健太の二遊間を襲った鋭い打球をダイビングキャッチ。体を投げ出して逆ハンドで二塁のベースカバーに入った遊撃・門脇誠にグラブトスし、二ゴロ併殺を完成させて球場がどよめいた。

 スポーツ紙記者は「ユーテリティープレーヤーという枠でおさまらない選手です。守備能力の高さは門脇とそん色がないでしょう。打撃も簡単に凡打しないので相手バッテリーが神経を使う。野球脳が優れた選手ですよね。二塁は吉川尚輝が開幕スタメンに最も近いですが、打撃の状態がまだまだ上がってきていない。ウカウカしていられませんよ」と指摘する。

守備での貢献度は高い吉川


 もちろん、吉川も負けるつもりはない。ゴールデン・グラブの受賞経験はないが、二塁の守備能力は球界トップクラスだ。巨人の名二塁手として活躍した野球評論家の篠塚和典氏は、読者からの質問にプロフェッショナルが答える週刊ベースボールの企画「ベースボールゼミナール」で、吉川の守備を高く評価している。
 
「現在の吉川選手の守備について言うならば、まず『自信を持って、当たり前のことを当たり前にこなしている』ということが前提にあります。二塁守備というのは一塁までの送球の距離も遊撃や三塁よりは短いですから、ある程度は落ち着いてプレーすることができるポジションです。ファインプレーというのは流れの中であとからついてくるものであって、まずは当たり前のことを当たり前にこなすことが何よりも求められます。今の吉川選手はとても高い水準で、この前提をクリアすることができています。加えて高い身体能力、特にスピードを備えています。一歩目の反応の速さには目を見張るものがありますし、肩も弱いわけではなく、むしろ強いほうだと言えるでしょう。このスピードと肩があるから、局面によっては深い守備位置で守っていても余裕をもってプレーすることができるのです」

二塁手のレギュラーである吉川。その守備は高く評価されている


「二塁守備のベーシックな部分に自信が持てていることで、さらに予測を含めたポジショニングをいろいろと考えることができるのでしょうし、実際に考えていることがプレーからも伝わってきます。こうしたことのトータルで、吉川選手は意識的に守備範囲を広げているのです。守備範囲が広くなれば追いつける打球も増えますし、ギリギリのプレーを強いられる場面も増えます。その結果として打球を処理し切れず、時には失策と記録されるプレーも増えます。ただ、それは守備範囲が広いことの副産物。そもそも打球に追いつけずに間を抜かれてしまっては確実にヒットになるわけですから、アウトにできる確率を少しでも高くするためにはまず、打球に追いつく、守備範囲が広い必要があるわけです」

 守備での貢献度が高い選手だが、課題がある。好不調の波が多い打撃と故障の多さだ。昨年は132試合出場で打率.256、7本塁打、36打点、4盗塁。春先は状態が上がらずスタメン落ちを経験するなど、期待値の高さを考えれば物足りない数字だった。泉口という強力なライバルが加入し、大きな刺激を受けているだろう。眠っていた能力が引き出されるか。2人の熾烈なポジション争いが注目される。

写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング