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【大学野球】金丸夢斗擁する関大を陰で支える主務は“裏方のスペシャリスト”

 

特例でマネジャーへ転身


関大・山口主務は佐賀北高1年からマネジャーを務める。裏方一筋、7年目だ[写真=BBM]


 関大・山口健太主務(4年・佐賀北高)は、小田洋一監督からの言葉を肝に銘じる。

「マネジャーはチームの顔、心臓。対外的に見れば、窓口であるマネジャーの第一印象で、チームが評価される」

 2024年、関大はプロ注目の153キロ左腕・金丸夢斗(4年・神港橘高)を擁する。グラウンドには毎日、多くの来客があり、試合になれば、報道陣が詰めかける。こうした渉外業務、取材対応を担っているのが山口主務だ。

 3月17日、慶大とのオープン戦は活動拠点・関大グラウンドで行われた。センター後方に受付があり、関係者が訪れるたび、山口主務は観戦スペースまで丁寧に案内。相手校マネジャーとの打ち合わせ、雨天の中で試合前ノックのスタート指示、試合後は広報担当として取材仕切り。相手校が帰るまで、各種アテンドにも徹していた。一人で何役もの仕事を、円滑に回していたのである。

 2007年夏の甲子園で全国制覇を遂げた佐賀北高出身である。「百崎敏克先生(当時・副部長)の下で野球をしたかった」。胸を膨らませて「KITAKO」の門をたたいたが「内野ノックに入ったのは1回ぐらい。これは(実力的に)無理だな、と思いました」。

 マネジャーは毎年、2年秋の新チーム結成時に一人を選出するが「特例でした」と、山口主務はすぐに裏方へと転身した。データ班、学生コーチ、渉外担当……。高校3年間でマネジャーの基礎を学んだ。「2年夏には甲子園に出場し、チームにも帯同させていただきました。高校生活はすべてが財産です」。

 3年夏はコロナ禍で甲子園出場をかけた地方大会が中止。山口主務は「全国に挑戦できる大学で、マネジャーをしたい。関大野球部が素晴らしい環境だと聞いて、志望しました」と、指定校推薦で入学した。

 下積み生活の3年間は、マネジャー業務のほかに、データ班を一人で担当。チームに欠かせない裏方のスペシャリストとして、関西学生リーグでは21年から秋3連覇に大きく貢献した。最終学年。満を持しての主務就任だ。

「今年のチームは、日本一を狙える」


 金丸は3月、侍ジャパントップチーム(欧州代表との強化試合で先発して2回無失点)での活躍を経て、注目度がさらに上がった。取材をコントロールするのも、主務の仕事。小田監督と相談の上、春の開幕までは、数日の取材日を設定して、報道各社が一斉にインタビューする機会を設けた。万全のコンディションで過ごしてほしいと願っているからだ。

「金丸は野球に対してストイック。『こういう選手が伸びる』という典型かと思います。いつも体のことを考えている。こんな選手、見たことがありません。金丸に限らず、選手たちを全力でサポートしていきたいです」

 小田監督は山口主務に、全幅の信頼を置く。指揮官の秘書役でもある山口主務は小田監督のために、すべてを捧げる覚悟であるという。

「今年のチームは、日本一を狙える。小田監督にとっても就任1シーズン目で、良いスタートを切ってほしいと思います。監督の負担が少しでも軽減されるよう、野球に集中できるように、運営面で力になりたいです」

 常に周囲を見渡し、先回りして動く。まさに、マネジャーの鑑。山口主務は「忙しいということは、チーム状況が良いということです」と、前向きにとらえる。世代最強左腕の横には、敏腕主務。2024年の関大は「大学日本一」を目指す上での、条件が整ってきている。

文=岡本朋祐
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