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2024センバツ

【2024センバツ】新基準の金属バットで本塁打も…豊川・モイセエフが明かした対応の難しさ

 

阿南光のエースの前に3三振


豊川高・モイセエフは今大会から完全移行された「新基準バット」で大会第1号を放った[写真=田中慎一郎]


第96回選抜高校野球大会▼第2日
【1回戦(3月19日)】
阿南光(徳島)11-4豊川(愛知)

 4点ビハインド(1対5)の8回裏一死一塁。豊川高の三番・ モイセエフ・ニキータ(3年)が右越え2ランを放った。

 大会第1号。今大会から従来よりも低反発である新基準の金属バットが導入された。飛距離が抑制され、長打もなかなか出ない状況下、プロ注目スラッガーが存在感を示した。

 試合は4対11で初戦敗退。モイセエフは5打数1安打(3三振)に終わり、9回裏は最後のバッター(空振り三振)となった。打席ごとに巧みに配球を変えてきた阿南光高の右腕・吉岡暖(3年)を、攻略できなかった。

「(本塁打を)打てたことはうれしいですが、他の4打席は対応できず、とらえることができなかった。負けて悔しい。うれしい気持ちよりは、悔しい気持ちのほうが大きいです」

 ロシア人の両親を持つモイセエフは、高校通算16本塁打。新基準バットで2本目のアーチも、甲子園であらためて対応の厳しさを実感した。トップレベルの高校球児が語るのだから、説得力がある。扱いは相当、難しいようだ。

「バットの芯でとらえられれば、以前のバットとさほど、本塁打の感触は変わらない。ただ、詰まったら飛距離は出ず、外野の頭を越すこともありません。細くなっているので、バットの芯でとらえるのは難しいです」

 打球部は従来の3ミリから4ミリと肉厚になり、トランポリン効果を抑えた。また、最大径が64ミリと3ミリ細くなり、木製バットに近い形状に。各種試験で反発性能は5〜9パーセント、打球初速は約3.6パーセント減少する結果が示されていた。2年間の猶予期間を経て、2024年シーズン(センバツ大会、都道府県大会)からに完全移行されたが、明らかに「飛ばないバット」となった。打高投低から投高打低へ、高校野球は変わった。

 打者は「芯をとらえる技術」が求められる。守備側の判断も、慣れる時間が必要だ。打球が失速するゴロに対して、内野手は丁寧な打球処理が求められ、外野手は得点圏におけるポジショニングが命運を分ける可能性がある。

 センバツ大会は各チームともシーズンの公式戦初戦であり、今年に限らず「入り」が難しい。今大会、この新基準バットに早く順応したチームが上位へ進出することは間違いない。

文=岡本朋祐
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