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阿部巨人のキーマン 吉川尚輝は「恐怖の八番打者」で輝けるか

 

打撃センスは非凡


開幕から「八番・二塁」で試合に出続けている吉川


 巨人の今季のキーマンになることは間違いないだろう。開幕から5試合連続「八番・二塁」でスタメン出場した吉川尚輝だ。

 阿部慎之助監督が就任し、内野で唯一レギュラーを確約しなかったのが二塁だった。吉川が2022年から2年連続規定打席に到達し、広い守備範囲と球際の強さでチームを再三救ってきたが、高い能力を最大限発揮しているとは言えない。昨年は132試合出場で打率.256、7本塁打、36打点、4盗塁。好調を長期間維持できず、打順がなかなか定まらない。スタメン落ちも味わった。

 即戦力ルーキーの泉口友汰の加入で、ウカウカできない立場になった。昨年は打撃フォ―ムで試行錯誤していたが、今年は阿部監督や二岡智宏ヘッド兼打撃チーフコーチの助言を受け、昨年の秋季キャンプ、今年の春季キャンプで打撃フォームを固めた。そして、与えられた役割が「八番・二塁」。阪神との開幕3連戦で重要な役割を果たした。

 3月29日の開幕戦では0対0の5回に先頭打者で右翼フェンス直撃の二塁打で出塁。三塁に進塁すると、佐々木俊輔の野選で本塁に生還した。ヘッドスライディングでつかんだ先制点が決勝点に。6回も右前打を放ち、マルチ安打を記録した。31日の阪神戦は敗れたが、猛打賞と奮闘。3回に右前打を放つと、4回一死一、二塁で再び右前打。6回二死一塁でも右翼へ安打を放ち、今季初の猛打賞を記録した。チームも2勝1敗とカード勝ち越し。昨年の阪神戦は6勝18敗1分と大きく負け越しただけに、大きな意味を持つ3連戦だった。

「吉川の打撃センスは非凡なものがある。チャンスメーカーにもポイントゲッターにもなれるので八番でハマると怖い。下位打線がつながると大量得点になりますしね。昨年の阪神が八番打者の重要性を証明している。吉川の役割は木浪と重なりますね」(他球団の首脳陣)

昨年Vの阪神には「恐怖の八番打者」


 昨季18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一に輝いた阪神でポイントになったのが、「恐怖の八番打者」として輝いた木浪聖也だった。近年は伸び悩んで一軍に定着できなかったが、岡田彰布監督の方針で中野拓夢が遊撃から二塁にコンバートされたことで、遊撃でチャンスが巡ってくる。

 127試合出場で打率.267、1本塁打、41打点。得点圏打率.310と勝負強さを発揮し、109安打、22本の二塁打を積み重ねた。チームで2番目に多い20犠打をマークし、ヒットエンドランを鮮やかに決めるなど、木浪が打席に立つと攻撃のバリエーションが広がる。一番の近本光司が自己最多の54打点をマークしたのも、木浪がチャンスメークで稼働した貢献度が大きい。打撃好調の時期も上位に打順を入れ替えなかったのは、首脳陣が「八番・木浪」の働きぶりを評価している証だった。

木浪の働きぶりを絶賛した指揮官


 岡田監督は、週刊ベースボールのコラムで木浪の働きぶりを絶賛している。

「まず八番という打順の役割を、すべて分かっていた。八番という打順は軽く見られがちだが、決してそうではない。打線に流れがある中、八番によってそれがうまくつながり、機能する面白さがある。それを木浪は理解できていた。例えば二死で回ってきたら、なんでもいいから出塁して九番の投手まで回す。これで攻撃が終わっても、次は一番から始まる。そういう形づくりができる打順であり、先頭で臨んだ場合、ここで出塁し投手の送りバントで、チャンスを膨らませる。2023年、一番・近本の得点圏打率が高かった要因が、八番・木浪の出塁によるものやった」

「オレは八番・木浪を動かさなかった。近本が死球で欠場したとき、一度だけ動かしたけど、それ以外は八番に固定。そのうち、マスコミには『恐怖の八番』と称されるようになり、オールスターのファン投票で大きな支持を集めた。八番という打順では画期的なことやと思うけど、ファンも木浪の働きを高く評価して、オレはそれがうれしかった」

 吉川は木浪と同学年の29歳。クリーンアップを担う岡本和真坂本勇人、上位を打つ門脇誠に注目が集まるが、吉川が下位打線の核になれるかが、チームの命運を握ると言っても決して大げさではない。

写真=BBM
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