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巨人・小林誠司が復活の兆し 阿部慎之助監督に「捕手の起用法が絶妙」指摘が

 

開幕から好リード


11年目の今季、開幕から役割をしっかり果たしている小林


 開幕ダッシュに成功した巨人。セットアッパーで開幕から8試合連続無失点と好投を続けるドラフト1位の西舘勇陽、野手陣はプロ2年目の門脇誠萩尾匡也、ドラフト3位の佐々木俊輔ら若手の奮闘が目立つ中、この男が復活の時を迎えようとしている。6月に35歳を迎えるプロ11年目の小林誠司だ。

 今年のプロ野球は試合終盤まで緊迫感あふれる投手戦が目立つ。1点をいかに防ぐか。再評価されているのが「守備型捕手」だ。小林はその役目を見事に果たしている。今季初のスタメンマスクをかぶった4月4日の中日戦(バンテリン)では、同学年の菅野智之と657日にバッテリーを組んだ。負ければ同一カード3連敗の危機だったが、菅野の持ち味を引き出して7回4安打無失点。救援陣も踏ん張り、2対0で完封勝利を飾った。

 菅野が2試合目の登板となった11日のヤクルト戦(神宮)でも再びバッテリーを組み、6回3安打無失点の好リードを見せると打撃でも魅せた。0対0の6回二死二塁の好機で高橋奎二の直球を振り抜くと、打球は左前にポトリと落ちる同点適時打。塁上でガッツポーズを見せ、三塁ベンチ前で準備していた菅野もグラブを叩いて喜んだ。この一打が942日ぶりの決勝打に。5対0の完封勝利を飾った。

今季初のスタメンマスクをかぶった4月4日の中日戦で2対0の勝利に導き、最後を締めた大勢とがっちり抱き合った


 14日の広島戦(東京ドーム)では、ウォーカーとの交換トレードでソフトバンクから加入したサブマリン・高橋礼と公式戦初のバッテリーを組んだ。ピンチの場面で直球を続けるなど強気の配球で広島打線に決定打を許さない。高橋礼は7回1失点の好投で今季2勝目をマーク。広島打線を3安打に封じ込めて6連勝を飾った。菅野と今季3試合目のバッテリーを組んだ18日の阪神戦(甲子園)も8回途中まで1失点。延長10回の末に1対2でサヨナラ負けを喫したが、2回に先制の中前適時打を放つなど攻守で活躍が光った。他球団の首脳陣は、阿部慎之助監督の起用法に言及する。

「捕手出身の監督なので、投手の良さを引き出すことを重視している。起用法が絶妙ですよね。小林は打力が課題だけど、それを補って余りある配球術、守備能力がある。大城卓三が正捕手であることは間違いないが、同じ捕手が続くと配球の傾向が読まれやすくなる傾向がある。小林や岸田行倫を起用することでリードの目先を変えられるし、大城を休ませることができる。ミーティングでも捕手の起用法で対策の仕方が変わってくる。神経を使いますよ」

数字に表れない魅力


 2016〜19年と4年連続リーグトップの盗塁阻止率をマークしたことがフォーカスされるが、小林の魅力は数字に表れない部分にある。投手への気配りを欠かさず、繊細かつ強気なリードで投手を引っ張る。

 広陵高に入学時は投手兼遊撃手だったが、1年冬に監督の中井哲之の助言で捕手に転向。2年秋から正捕手になり、バッテリーを組んだエースが野村祐輔(現広島)だった。3年春のセンバツは甲子園ベスト8、夏は準優勝。小林は週刊ベースボールの企画で野村と対談した際、「野村にいろいろ教わりました」と感謝を口にした上でこう語っている。

「今、その構えのクセが残っているかは分からないんですけど、どのピッチャーに対してもまず聞くんですよ。『どういうふうに構えてほしい?』と。ピッチャーが投げやすいように。配球とかはピッチャーとコミュニケーションを取るのは当然なんですけど、ひょっとすると、構え方まではあまりほかのキャッチャーは合わせないのかもしれないです。ただ、やっぱり中には野村のように小さく構えてほしいタイプもいるし、逆にアバウトでOKなピッチャーもいる。両方に対応できる今の僕があるのは、高校時代に野村さんに鍛えていただいたおかげですね」

 小林は侍ジャパンに選出されて17年のWBCに出場した際、他球団の投手たちから「投げやすい」と話題になった。この大会で正捕手を務め、全7試合出場で20打数9安打、チームトップの打率.450、1本塁打、6打点と打撃の大活躍がフォーカスされたが、守備面の貢献度が際立っていた。準決勝の米国戦でアダム・ジョーンズの盗塁を阻止し、巧みなブロッキングで捕逸は0、絶妙なタイミングで間を取って投手を冷静にさせていた。

 攻守で能力が高い大城が正捕手であることは間違いない。だが、小林にも大城にはない個性がある。V奪回に向け、縁の下の力持ちで再び輝きを取り戻せるか。

写真=BBM
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