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【高校野球】「生徒たちのあきらめない思いが…」 タイブレークで敗戦も驚異の粘りを見せた鎌倉学園 

 

多くの観衆の後押しを受けて


面本はエースでキャプテン。右肩の主将マークが、責任の重さを示す[写真=BBM]


【4月20日】
春季神奈川県大会4回戦(大和)
向上高12-11鎌倉学園高

 4回を終えて0対9。鎌倉学園高としては、コールドゲーム(5回10点差以上、7回7点差以上)の危機だった。しかし、大和スタジアムのスタンドは、あきらめていなかった。

「カマガク、ここからだぞ〜!」

「カマガク、まだまだ、行けるぞ〜!」

 スクールカラーのタオル、Tシャツを着用した観衆からの大声援だ。学校創立1921年。野球部OBだけでなく、卒業生、関係者にも愛されている。これが「伝統の力」になる。

 鎌倉学園高は6回表に2点返す。しかし、7回表に無得点ならば、コールドゲームが成立する。ここで、急展開を見せる。鈴木陽多(3年)の3ランが飛び出すと、その後も打線がつながり、主将・面本和輝(3年)の適時打で1点を加え、さらに二死満塁から天野雄貴(3年)の走者一掃の二塁打で、ついに9対9としたのである。一塁スタンドでは、校歌の大合唱が繰り広げられた。ファンは肩を組んで盛り上がり、多くの観衆の後押しが、同点劇の一因となったのは言うまでもない。

 鎌倉学園高は8回表に勝ち越すも、その裏、向上高は追いつく。9回表も勝ち越すが、向上高はその裏、驚異の粘りで11対11。同点のまま、ついにタイブレークへと突入だ。

 鎌倉学園高は10回表、走塁ミスなどもあり無得点。その裏にサヨナラ負けを喫した。3時間51分の激闘だった。鎌倉学園高・竹内智一監督は試合後に、こう振り返っている。

「生徒たちのあきらめない思いが、ここまでの試合にしてくれた。称えてやりたいのは事実ですが、何か足りなかった。一つひとつのプレーの精度は向上さんのほうが上。この10イニングに詰まっていたと思います。(秋の)勝ち上がるチームから、勝ち抜けるチームを目指してきましたが、私自身も、もう1回、頭を整理して夏に向かいたいと思います」

「7連勝して、甲子園に行く」


大量ビハインドを受け、鎌倉学園高・竹内監督が選手たちに指示を送る。この後、猛反撃が始まった[写真=BBM]


 鎌倉学園高は昨秋の県大会で準決勝進出。今春はシード校として挑んだが、8強を前に敗退した。今夏は第3シード校として迎える。

 主将で背番号1を着ける面本は言う。

「昨秋は桐光学園との準決勝で8回裏(のコールド寸前で)、0対7から1点を取るのがやっとでした。この春は0対9から追いつけたのは、チームとしても成果です」

 しかし、納得はしていない。

「正直、シード校は意識していないんです。7連勝して、甲子園に行く。それだけです」

 面本は4回戦を「二番・二塁」で先発。2度の救援マウンドに上がり、10回裏は打球処理の際に右足がつりながらも、11分間の治療を経て続投したが、最後は力尽きた。

「このままでは、エースとして失格。(責任が)重く感じることもありますが、すべてを背負い、自分で乗り越えていくしかない」

 夏の県大会は、今年も、鎌倉学園高が場内の空気感を作り上げる。スタンドから一体感のある大応援、そして、勝利した際には全力校歌。神奈川高校野球の風物詩の一つである。最後の1球まで集中し、一生懸命プレーする姿が、自然と周囲を味方につけるのだ。

文=岡本朋祐
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