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【大学野球】法大が勝ち点1を奪取 「左右のエース」を不動の立場とした篠木健太郎&吉鶴翔瑛

 

相当な覚悟で中1日の先発マウンドへ


篠木[右]は8回1失点で今季初勝利で勝ち点奪取。5回裏に決勝3ランを放った松下[左]とともにポーズ[写真=BBM]


【4月22日】東京六大学リーグ戦(神宮)
法大4-1立大(法大2勝1敗)

 チームメート7年目の絆は固い。木更津総合高出身の157キロ右腕・篠木健太郎と、151キロ左腕・吉鶴翔瑛の4年生コンビである。法大入学以来、2人が掲げてきた「左右のエース」を、名実とも不動の立場とした。

 立大との開幕カード。1回戦で篠木は7回1失点と力投しながらも、打線の援護に恵まれず、敗戦投手となった(0対1)。2回戦は吉鶴が7回途中1失点の粘投により雪辱し、1勝1敗のタイとした(2対1)。2試合とも、二番手で救援した左腕・安達壮汰(4年・桐光学園高)の好リリーフがあったことも、忘れてはならない。

 吉鶴は「もう一度、3回戦で篠木を投げさせたい」との思いで投げ込んだ。篠木は2回戦、コンディション調整優先のためベンチを外れ、三塁側応援席でチームメートと全力で応援した。「応援団を間近に見て、やっぱり応援してもらえる幸せを感じましたし、吉鶴が頑張って投げている姿に、自分としても、感じるものがありました」。勝ち点(2勝先勝)をかけた3回戦の前夜、吉鶴は「任せた」と篠木にLINEを送った。「(1カードで)2回負けたら男ではない」。篠木は相当な覚悟で中1日、3回戦の先発マウンドに立ったのだ。

篠木は最近では珍しいワインドアップ。大きくふりかぶって、打者を圧倒していく[写真=BBM]


 篠木のスタイルは1球1球、雄叫びを上げる気迫の投球が持ち味だ。右肩のコンディション不良により、昨秋はシーズン途中で離脱した。150キロ超を連発してきた力投派からの脱皮。ドラフトも控えた最終学年を前にして、モデルチェンジを施してきた。

「(今春から指揮する)大島(大島公一)監督(元近鉄ほか)から『変わる勇気、変わるきっかけもある』との話がありました。(球速に)こだわりがないこともありませんが、変わることでチームが勝てば……」。大きく振りかぶるワインドアップは不変だが、制球重視のバランス良いフォームになった。今年2月に就任した高村祐助監督(元近鉄ほか)との出会いも大きく、フォークが新たな武器に加わった。「握りから教わりました。(昨年までは)落とそう、落とそうとしていましたが、今はストレートの軌道に近い形でできている」。

 1回戦は7回で100球を投げ、わずか1四球。チームを勝利へと導くことはできなかったが、取り組んできた成果を発揮した。とにかくテンポが良い。相手打者に考える時間を与えない。勝負の3回戦は、さらに気持ちが乗っていた。絶対に引かない。「2年から先発をさせていただいている責任感。経験値のアドバンテージを強みにしている」。1回戦で左膝に打球を受け、3回戦では第2打席で、ガードを装置していた右上腕付近に死球を受けた。「気持ち良いぐらいです(苦笑)。影響はなかった」と、涼しげな表情で続投した。

 同点の5回裏、松下歩叶(3年・桐蔭学園高)の勝ち越し3ランが出た。松下は2回戦に続く決勝打である。「ゲームを決める一打。チャンスの場面が好きです。強気でバットが振れる」と胸を張った。味方のバックアップに、篠木のスイッチが入る。「終盤にもう一つ、ギアを上げられたのは、吉鶴につなぐ上でも良かった」と、躍動感ある投球で、8回にはこの日、最速の149キロを計測。8回を117球で、8回裏の打席で代打が告げられた。

左右の両輪で勝ち点を挙げた充実感


3点リードの9回表は、先発した2回戦から連投となった左腕・吉鶴が3人で締めた[写真=BBM]


 今季初の勝ち点まで、ラスト1イニングである。大島監督はベンチでの舞台裏を明かす。

「吉鶴が『9回の1イニングを行きます!』と。本来は、行かせたくなかったんですが……(苦笑)。篠木が8回に全力で行くので、2人の気持ちがそう(決断)なった」

 吉鶴は9回表、立大の攻撃を3人で締めた。左右の両輪で勝ち点を挙げた充実感を、高校からの同級生・篠木はうれしそうに語る。

「(試合前に)『飛ばしていくから』と言ったんです。すると、吉鶴は『あとは、任せろ』と。信頼している。吉鶴が後ろに控えていると頼もしいです」。法大はこれ以上ない二枚看板による継投リレーで、絶好のスタートを切った。大島監督は手ごたえを口にした。

「この3試合で3失点。投手を含めた守りができれば、勝機は出てくる。今後もこういう展開が多くなると思うので、篠木に踏ん張ってもらわないといけないですかね?(苦笑)」

 横にいた篠木はニッコリ笑った。頼られるほど、意気に感じる右腕エースである。残り4カードの抱負を問われると「チームとしても、自分としても目指しているものがある。勝利に貢献できる投球をしたい」と真っすぐ前を向いて答えた。法大のリーグ優勝は2020年春が最後。篠木はV経験がなく、今春は並々ならぬ思いがある。4月27日から組まれる次カードは昨秋の優勝校・慶大だ。吉鶴とともに、4年生が法大をけん引していく。

文=岡本朋祐
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