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【高校野球】昨夏甲子園覇者・慶應は準々決勝で逆転負け 夏に向けチームマネジメントに長ける指揮官の腕の見せどころ

 

「立ち位置としてはチャレンジャー」


慶應義塾高は横浜高との準々決勝で敗退。今夏は「甲子園連覇」がかかるが、まずは激戦区・神奈川大会を勝ち上がらないといけない[写真=田中慎一郎]


【4月28日】
春季神奈川県大会準々決勝(保土ヶ谷)
横浜高9-4慶應義塾高

 慶應義塾高は昨夏、107年ぶり2度目の全国制覇。今夏は「前年優勝校」として挑む。

 旧チームと比較されるのは、王者の宿命である。森林貴彦監督は「周りからは『夏連覇』『優勝』とか言われますが、立ち位置としてはチャレンジャー」と強調する。

 昨秋は秋の覇者・桐光学園高との準々決勝で敗退した。今春は2回戦から3試合を勝ち上がり、夏の第2シードを獲得。準々決勝では横浜高に4対9と力負けした。横浜高は昨夏の決勝で2点をリードした9回表、渡邉千之亮(慶大1年)に3ランを浴び、無念の逆転負け。相当な覚悟でこの一戦に臨んでいた。

慶應義塾高のエース・小宅は今春、コンディション調整の遅れにより、背番号11を着けた[写真=田中慎一郎]


 慶應義塾高は決して、受け身になったわけではない。この段階で、全力を出し切った結果である。先発は昨夏のVの原動力の一人となった145キロ右腕・小宅雅己(2年)。調整遅れにより、今春は背番号11を着けた。湘南学院高との3回戦では5回途中無失点の好投。ただ、状態としては4割程度。横浜高との準々決勝は5回途中4失点で降板した。

 森林監督は万全ではないことは承知の上で「経験値を高めるための試合」とエースを起用。小宅は「現状ではベストの投球ができた。(夏は)自分が勝たせる投手になりたい」と語った。横浜高・村田浩明監督は「小宅君のカットボールはすごい。(夏の攻略は)難しくなるはず」と、警戒感を強める。昨夏の優勝メンバーの一人である左腕・鈴木佳門(3年)はコンディション不良により、今春の登板はなかったが、野手として出場した。夏は投手2人の奮起なくして、上位進出はない。

大変なハードルを乗り越えて


 打線は一番から五番までを2年生で並べ、ポテンシャルの高い選手が多い。横浜高との準々決勝が行われたサーティーフォー保土ヶ谷球場は超満員。大観衆の中でプレーしたのは、夏への財産だ。昨夏は右翼手のレギュラーとして頂点を極めた主将・加藤右悟(3年)は、不動の正捕手として覚悟を語る。

「自分たちのチームは、実力がない。順境では強いですが、逆境に弱い。チームとして沈んでいるときに、いかに這い上がっていけるか。チェレンジャーとして向かっていく」

 照準は夏一本。森林監督は春を総括した。

「今日のゲームだけを見れば、打力が課題と言われるかもしれませんが、攻守走、すべての面で総合力を上げていきたい。下級生が多いチーム。夏までに伸びてくることを期待します。(周囲から)『チームが変わったな』と言われるように、私がチームの変化を引き出していきたい。昨春は春の県大会で優勝して勢いをつけて、夏の大会に臨みましたが、今年はこの後の練習試合で上げていきたい。夏まで約2カ月半。短いですが、時間はある」

 チームマネジメントに長ける、指揮官の腕の見せどころである。夏の甲子園の深紅の大優勝旗はこの1年、慶應義塾高が所持している。

「一人で返しにいくのや嫌なので、皆で返しに行きたいと思います」(主将・加藤)

 慶應義塾高は「甲子園連覇」がかかるが、まずは、激戦区の王座に上り詰めるのが第一関門だ。「神奈川連覇」も、大変なハードルである。全員で壁を、一つひとつ乗り越える。

文=岡本朋祐
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