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【高校野球】準決勝で敗退も1年生4人がハマスタの空気感を味わった横浜 夏に向けてこの上ない収穫

 

「結果」と「育成」の両輪


最速143キロ右腕・織田はバランスの良いフォームで将来性抜群だ[写真=田中慎一郎]


【5月3日】
春季神奈川県大会準決勝(横浜スタジアム)
東海大相模高5-1横浜高

 名門校、強豪校は常に勝利が「宿命」である。

 一方で「結果」と「育成」の両輪を追い求めるのも、一発勝負の夏を勝ち上がる上では、絶対に必要である。東海大相模高との「名門対決」で惜敗したものの、2024年春の横浜高は一つの成果を得たと言っていい。

 勝てば関東大会出場の準決勝で、先発を託されたのは1年生右腕・織田翔希だった。織田は1万4000人を動員した慶應義塾高との準々決勝では、9対2のリードから5点差に迫られた9回裏一死走者なしから三番手で救援。打者2人を三振に仕留める圧巻のピッチングを見せ、大舞台での強心臓ぶりを見せた。

左腕・若杉はマウンドさばきにセンスがあり、小気味の良い投球を披露[写真=田中慎一郎]


 準決勝、神奈川のメイン会場・横浜スタジアムには1万8000人の大観衆が詰めかけた。内野席はほぼ満員(外野席は開放せず)。織田は3回途中2失点で降板したが、低めに伸びるストレート、変化球のキレには高い将来性を感じた。3回表二死一塁で救援したのは1年生左腕・若杉一惺。東海大相模高の四番・金本貫汰を二ゴロに抑え、4回表も無失点。5回表に走者を背負った場面で、左腕エース・奥村頼人(2年)にマウンドを譲ったが、持ち味の小気味の良い投球を披露した。

 野手も1年生の良さが光った。味方野手の死球退場を受け、池田聖摩が4回表から遊撃へ。1失策を犯したものの、あくまでも攻めた結果である。入学したばかりの新入生とは思えない、躍動感あるプレーを連発していた。攻守走すべてにポテンシャルが詰まっており、見ている者をワクワクとさせるプレーヤーである。4点を追う9回裏には江坂佳史が代打起用され、最後の打者となったが、1年生4人がハマスタの空気感を味わえたのは、育成過程における、この上ない財産である。

 横浜高はライバル・東海大相模高に対し、昨秋の県大会準決勝では、延長10回タイブレークの末にサヨナラ勝ち。この春は力及ばなかったが、試合後の横浜高・村田浩明監督のコメントに集約される。

「1年生は収穫です。伸びシロしかない。1年生の活躍で2、3年生も刺激を受けてくれたら。あくまでも(勝負は)夏なので……」

遊撃手・池田は攻守走3拍子がそろう。アグレッシブな選手である[写真=田中慎一郎]


 1年生に頼るのではない。あくまでも底上げ。ベンチ登録20人で戦う夏へ向け、チーム力アップは、猛暑を勝ち抜く上で欠かせない。夏は3年生の思いの「差」が勝敗を分ける。激戦区・神奈川の厳しさを知り尽くす村田監督だからこそ、「育成」と「結果」を両立させてきた。夏は堂々の第1シードである。

 甲子園出場をかけた夏本番まで約2カ月半。横浜高は昨夏、慶應義塾高との決勝で2点リードの9回表に逆転3ランを浴び、3年連続出場を逃した。この日の準決勝は、昨年7月26日以来となる、横浜スタジアムでの公式戦だった。「1年前のことなので、思い出すときついので、あえて意識しないようにしています」。夏の悔しさは、夏でしか返せない。村田監督は努めて、感情をグッと抑えていた。

文=岡本朋祐
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