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【高校野球】小笠原慎之介超えを誓う東海大相模・藤田琉生 身長198センチ左腕が目指す野望

 

昨秋のリベンジで歓喜の涙


東海大相模高の198センチ左腕・藤田は横浜高との県大会準決勝で1失点完投した[写真=田中慎一郎]


【5月3日】
春季神奈川県大会準決勝(横浜スタジアム)
東海大相模高5-1横浜高

 今春から東海大相模高の背番号1を着けるのは、198cm左腕・藤田琉生(3年)だ。

 湘南ボーイズを通じての先輩である小笠原慎之介(現中日)の影響で、タテジマのユニフォームにあこがれ、同校へ進学した経緯がある。高校入学以降で、身長は4センチ伸びた。「スーパー中学生」として騒がれていたが、高校ではなかなか思うようにいかなかった。

「注目を浴びて、重圧もありましたが、プレッシャーに負けないようにしてきた」

 屈辱を味わったのは昨秋、横浜高との県大会準決勝だ。背番号18を着けた藤田は5対5の9回裏から救援し、このイニングを無失点に抑え、9回で決着がつかず、タイブレークに突入した。東海大相模高は10回表に4得点。このまま逃げ切るかと思われたが、10回裏、横浜高の反撃に遭い、あと1アウトが奪えず降板。救援投手が持ちこたえられず、サヨナラ負けを喫した(記録上、藤田は5失点)。

 悔しさを胸に、冬場は体をいじめた。グランドに隣接する陸上競技場では100メートルのインタバル走12本を、2セットこなした。下半身強化と並行し、食事面も改善。就寝前に白飯を平らげ、7kg増の92kgとなった。精神面も大きく変わった。

「原先生(原俊介監督)に『顔!!』と言われていて……。(試合中も)不安そうな表情に見えるそうなんです。練習から常に、あまり感情を出さないようにしてきました」

 意識的に、立ち居振る舞いにも気を使ってきた。

「小笠原さんは堂々としていました。チームをけん引するピッチング、声、行動で引っ張るのが相模のエース」。一冬を越えてたくましくなった藤田は今春の地区予選で、初めて背番号1を託された。「うれしい反面、エースの重みを感じる」

 マウンドでは、誰も助けてくれない。自らで乗り越えるしかない。

九番打者の藤田は2対1の8回表、豪快に右越え3ラン。エース自らのバットで決定的な追加点を挙げた[写真=田中慎一郎]


 今春、本領を発揮している。桐蔭学園高との4回戦では完封(1対0)し、桐光学園高との準々決勝では7回から救援して、3失点を喫するも試合を締め、4強進出(夏の第1シード)に貢献した。そして、名門対決となった横浜高との準決勝では1失点完投勝利。1点リードの8回には、自らのバットで試合を決定づける3ランを放ち、決勝進出を遂げた。

 被安打6、四死球4、奪三振2。「体重移動がしやすい。速いボールが投げられるようになった」と、今季から解禁となった二段モーションから、リズム良く投げ込む。コーナーにボールを集め、打たせる投球に専念し、勝負どころではチェンジアップが効果的。まさに昨秋のリベンジで、歓喜の涙を流した。

「(準決勝で勝利し、自身)初めて関東大会に出場できる喜びと、横浜高校に勝つことができ、こみ上げてきた」

 もちろん、春がゴールではない。夏の甲子園は2019年夏が最後。21年9月から母校を指揮する原監督にとっても、勝負の夏が控える。

「もっとストレートの球威を挙げ、全体的なレベルも上げて、エース番号らしい投球をして、甲子園優勝。日本一になる。(2015年夏に全国制覇へ導いた)小笠原さんと並び、さらに超えていきたいと思います」

 才能あふれる大型サウスポー。198センチは言うまでもなく、異次元の角度であり、初見での攻略は難しい。現状に満足することなく「相模のエース」としての役割に徹していく。

文=岡本朋祐
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