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【大学野球】東京六大学で“同級生”監督対決 見守った恩師の観戦場所は「ネット裏です。あくまでも真ん中」

 

神宮で11年ぶりの対戦


第1試合の打撃練習前、慶大・堀井監督と立大・木村監督は健闘をたたえ合った[写真=菅原淳]


【5月4日】東京六大学リーグ戦(神宮)
慶大2-0立大(慶大1勝)

 午前8時15分。打撃練習を前にして一塁ベンチに入った立大・木村泰雄監督が三塁ベンチの慶大・堀井哲也監督へ挨拶に出向いた。

 2人は韮山高(静岡)で3年間、汗を流したかつての球友である。東京六大学リーグ戦で同級生対決が実現した。堀井監督は高校当時外野手で、現役で慶大に合格し、4年秋に左翼のレギュラーを奪取した苦労人。一方、エースだった木村監督は1年の浪人を経て立大に入学した。俊足を生かすため、3年時に右打者から左打者に転向し、中堅の定位置を獲得。ともに努力を重ねて、神宮で活躍した。

 先発出場同士の直接対決は、堀井監督の4年秋(1983年)に実現した。慶大先勝で迎えた2回戦に「六番・左翼」の堀井監督は勝ち越し3ランを放ち、立大から連勝で勝ち点を挙げている。堀井監督にとって神宮での唯一の本塁打。「二番・中堅」の木村監督としては、右翼スタンドへ吸い込まれる弾道を見つめ、痛恨の一日だったと振り返っている。

 社会人野球の監督として、2013年の都市対抗準々決勝でも顔を合わせている。JR東日本を指揮した堀井監督が、日本製紙石巻を率いた木村監督を4対0で下している。

 11年ぶりの対戦。舞台は神宮。41年前の秋と同じ、慶大が三塁、立大が一塁ベンチだ。ネット裏付近であいさつ。言葉を交わした。

「おはようございます。よろしくお願いいたします」(堀井監督)

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」(木村監督)

「寝られた?」(堀井監督)

「寝られないよ。落ち着かないよ(苦笑)」(木村監督)

 握手を交わすと堀井監督が「手が冷たいな(笑)」と言うと木村監督は「緊張しているからかな(笑)」と冗談混じりに話した。

「木村監督が就任した昨年12月頃は『やるんだなあ』という思いもありましたが、各社さんからの取材のおかげで、早くから意識できたので、普通になりました」(堀井監督)

 慶大は2018年秋の3回戦から4引き分けを挟んで19連勝中。堀井監督は明かした。

「それは、関係ない。立教さんに限らず、東京六大学の戦いは五分五分。過去のことは関係ないですから」

 2019年12月から指揮する慶大では東京六大学リーグ戦優勝3度、全日本大学選手権、明治神宮大会で優勝各1度と、実績十分の名将の言葉には説得力がある。

試合は2対0で慶大が先勝


 今春から母校を指揮する木村監督は、大学球界における指導者の先輩として、堀井監督をリスペクト。挑戦者の姿勢を一貫してきた。

「特別な思いもありますが、普段通りです。開幕から早稲田、法政と対戦してきましたが、あくまでも慶應との対抗戦であり、同じ気持ちで、神宮で戦うだけです」

 立大は早大戦、法大戦とも1勝2敗で勝ち点を落としており、2017年春以来のリーグ制覇に向けては、あとがない状況にあった。

 連敗についても「頭にない。初戦を取ることに集中している。何とか残り3カードで勝ち点3を取って、食らいついていく」と、あくまでも1回戦での必勝を誓った。「ゴールデンウィークでお客さんもたくさん来ていただけるので、お客さんに何とか応えたい」。

 試合は2対0で慶大が先勝した。

韮山高時代の1、2年時の野球部監督だった豊岡武士・三島市長が神宮に応援に訪れた[写真=菅原淳]


 この日は韮山高時代の1、2年時の野球部監督だった豊岡武士・三島市長が神宮に応援に訪れた。観戦場所は「ネット裏です(苦笑)。あくまでも真ん中です」。チケットを握り締め、神宮のスタンドで見守った。

「二人とも野球に対して真面目。努力家でした。慶立戦を観戦するのは、1983年秋以来です。力のこもった良いゲームを展開してくれました。本当にうれしい限りです」

 1回戦が終わっただけでは、何も語れない。東京六大学は、あくまでも勝ち点(2勝先勝)勝負である。2回戦は韮山高校同窓会主催の応援バスツアーが開催され、関東在住者を含め、50人が神宮に駆けつける予定だ。母校の威信をかけた同級生対決は続いていく。

文=岡本朋祐
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