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【大学野球】「守りの人」から「打てる遊撃手」へ 早大・山縣秀が打撃開眼した理由

 

繰り返した基礎基本


早大・山縣は今春、打撃好調。8試合で13安打を量産している[写真=菅原淳]


【5月5日】東京六大学リーグ戦(神宮)
早大9-0東大(早大2勝)

「守りの人」からの脱皮である。

 早大・山縣秀(4年・早大学院)が打撃好調。3カードを終え、打率.448(29打数13安打)でリーグトップに立った(5月5日現在)。

 鉄壁のディフェンス力を買われ、2年春からベンチ入り。同秋から遊撃の定位置を獲得した。当時から早大・小宮山悟監督は「どこに出しても恥ずかしくない」と高評価。判断の良いポジショニングで、球際に強い。正確な捕球で、スローイングにも安定感がある。

 昨年は1学年上の熊田任洋(トヨタ自動車)が遊撃に入ったため、山縣は二塁に入り、その役目を果たした。最終学年になり、指定席のショートに戻った。今春も軽快な動きを披露。神宮のスタンドからは、守備機会のたびに「これは、うまい!!」と歓声が上がる。

 課題は打撃だったが、山縣はチーム屈指の練習の虫である。守備同様、コツコツと基礎基本を繰り返し、今春の打撃開眼につなげた。

 しかし、明大2回戦までは17打数3安打と調子が上がらなかった。「不調のとき、金森さん(金森栄治、助監督)の指導の成果で、良い形になった」(小宮山監督)。勝ち点を挙げた明大3回戦で自身初の3安打を放つと、東大戦では2試合で8打数7安打とヒットを量産した。打撃も、守備同様に粘り強い。逆方向へ、しぶとい打球を飛ばし、状況に応じてバント安打を正確に決める。8試合で6犠打と小技も得意。不動の二番打者は、最高のつなぎとして早大打線を活気づけている。

「コンパクトに、ミート中心。腕を伸ばさない。足と体幹を使う。小さく、強く、速く、です」。山縣は打撃のコツを明かす。

「本人が、打てることに越したことはない、と。上のステージ(プロ)でやりたいと言っているが、打てなければ……。必死になっている」(小宮山監督)

 3月上旬の沖縄・浦添キャンプ。山縣は2020年秋以来のリーグ優勝に貢献した上で、今春の目標を語っていた。同じ遊撃手で「ドラフト超目玉」と言われる明大・宗山塁(4年・広陵高)に相当なライバル視をしていた。

「宗山のことは意識していますし、注目もされている。自分は注目もされていない選手ですが、追い抜いてやろう、という強い思いがある。早稲田のレギュラーとして出場する限り、打率.350を目指したいです」

 山縣には、職人のようなオーラが漂う。決して目立たないが、チームに欠かせないピースである。スタンドで視察するNPBスカウトもそのあたりの良さは「調査済」のはずだ。

文=岡本朋祐
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