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西武ルーキー成長記

西武・青木智史育成コーチに聞く「主体的な行動力と言語化能力」の重要性【西武ルーキー成長記】

 

現在、埼玉西武ライオンズではコーチを含めた日本一の育成環境を整え、そこで成長した選手が活躍し、優勝していく伝統を継承しつつ、科学的で多面的な要素も加えながら、より良いライオンズとしての新たな育成環境に取り組んでいる。その試みの中の一つに「人財開発」がある。週刊ベースボールONLINEで今季の新人の姿を追っていく連載「西武ルーキー成長記」。まずは、「人財開発」とは何なのか。青木智史育成コーチ兼人財開発チーフに2回に分けて語ってもらう。

アウトプットすることで思考を整理


選手の練習を見守る青木コーチ


 育成コーチ兼人財開発チーフの青木です。育成コーチという肩書と共に、人財開発チーフとしての業務があります。人財開発は2021年に新設され、選手のグラウンド上での姿勢、取り組み方、考え方をサポートします。普段から選手一人ひとりの様子を観察し、対話して個々の選手の思考を把握した上で、声掛けすることを心掛けています。基本的に練習中はグラウンドにいて、試合中の動きも確認します。技術的な指導、フィードバックは各部門の担当コーチがするので、我々は選手たちがなぜそういう考えに至り行動をするのかを紐解き、「明日はこういう行動をしてみようか」などコミュニケーションを取ります。

 新人から2年目にかけて高めてもらいたいスキルが、主体的な行動力と言語化能力です。この2つの要素は一軍で活躍するために非常に重要だと感じています。言語化することで自分の意思を明確に伝えられ、自分の思考が整理される。主体的に動くことで、何をしたいかを周囲が理解し、協力を得やすくなります。明確にアウトプットする選手は成長の度合いが強いです。2年目までの選手たちを対象的に行っているのが、月に1度の定期面談です。

 面談は時間が決まっているわけではなく、お互いに言いたいことを言い合います。長い時は90分かかったときもありました。吐き出されることはいいことです。いろいろ考えている子でもため込んでぼんやりしているケースがあります。吐き出す、アウトプットすることで思考を整理できます。時間が長いから良いというわけではなく、短い時間でも個々の目標に向けての進捗を確認する目的があります。漠然と過ごして目標がぼやけてしまうのは良くないですから。

言語化能力が高まってきた育成3年目左腕の菅井


 昨年も定期面談を行いましたが、多くの選手が言語化する能力が高まったように感じます。特に印象的なのが育成選手の菅井信也です。菅井は「口数が多くない」と前任の面談担当から聞いていたけど、本人の中で変わりたいと思ったんでしょう。昨年は面談を重ねる度に言語量が多くなりました。コーチにどういう指示を受けたのかをしっかり答えられていましたし、良かった面と悪かった面、次の1カ月に向けて継続する部分、新しいアクションを起こす部分、切り捨てなきゃいけない部分がきっちり判断できていた。自己理解していましたし、目標に向けてブレずに取り組んでいたからこそ、ファームで年間を通して安定した成績を残せたのだと思います。今年は支配下昇格に向け、期待しています。

他力を使うことで成長できる


 定期面談の本質を理解してもらって、メリットを感じれば成長が速くなる可能性があります。それが球団の目指すところの1つですし、球団の顔となる若手が1人でも多く出てきて、ライオンズのサイクルになっていくことが重要だと思います。非常に明るい球団ですし、選手の自主性が尊重されている部分が多い。主体的に動ける良い雰囲気は、長年かけて培われたライオンズの風土だと思います。

 私は16年〜22年まで、立正大でコーチをしていました。部員が100人、コーチは2人という環境の中で、重要なのは観察することでした。一人ひとりが練習する時間量は決して多くないけど、しっかり観察しないと適切な感想を伝えられません。野球の技術的な話題だけでなく、「この先の人生をどうしていけばいいですか」、「僕はどういう職業が向いていますか?」など相談を受けた時もありました。立正大で指導に携わった7年間で18歳から22歳の世代の接し方の基礎はできたかなと思います。ライオンズで実際に関わる選手と世代が似ているので、大学のコーチの経験が生きている部分があると思います。個々の選手の性格を考えながら、アプローチすることを心がけています。

 ライオンズは練習、トレーニング施設が素晴らしいし、支えてくれる専門分野の人がたくさんいます。新人選手たちには「他力を利用するのは成長の近道の1つだよ」と伝えました。自分の信念は大事だけど、周りの客観的な意見を取り入れてサポートを受けることも大事です。感謝の気持ちを持って、しっかり他力を使うことで成長できる。恵まれた環境で能力を高められるかは自分次第です。次回は球団独自の試みとして22年から行っている「獅考トレーニング」についてお話させていただきます。

写真=BBM
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