週刊ベースボールONLINE

大学野球リポート

【大学野球】慶大4回戦で敗れ勝ち点を逃した立大 見ている者を熱くさせるプレーを体現

 

次につながる内容


立大は1勝1敗1分で迎えた慶大4回戦を落とした[写真=菅原淳]


【5月8日】東京六大学リーグ戦(神宮)
慶大3-2立大(慶大2勝1敗1分)

 立大は慶大1回戦を落としてから、2回戦で引き分け、3回戦で同カードの連敗を20(5引き分けを挟む)で止めた。雌雄を決する4回戦に臨んだものの、惜しくも1点差で敗れた。開幕から早大(1勝2敗)、法大(1勝2敗)に続き、勝ち点を落とした。

 勝者と敗者に分かれる勝負の世界は厳しい。もちろん、結果を求めるのが最大の目標であるが、学生野球には教育的な観点もある。目的は人間形成だからだ。ゲームに至るまでの準備、そして、実際に相手と対峙する姿勢。この3カードを見る限り、試合展開としては十分、次につながる内容であったと言える。

 かつて、東京六大学の応援団OB関係者が語っていた言葉を思い出した。

「私たちは神宮球場で学生たちのハツラツとしたプレー、最後まであきらめない姿が見られれば、気持ちよく家路につくことができるんです。応援する立場としては、スタンドから後押しすることしかできません。東京六大学リーグ戦という対抗戦の中で、勝ち負け以上に、大事なものがあると思っています」

 1回戦は1万2000人、2回戦は8000人、3回戦は6000人、4回戦は1000人の観衆。現地だけではなく、多くの関係者、ファンが各メディアを通じて立大の戦いを見届けた。

 立大は昨秋、明大との3カード目を迎える直前、一部の野球部員による複数の問題行為が一部報道で発覚した。大学側は明大1回戦を前に神宮球場内で記者会見を開き、調査委員会の設置を発表した上で前部長、前監督の活動自粛。次期監督に内定していた木村泰雄コーチが監督代行として、チームを指揮した。明大戦では責任を感じた4年生が、神宮での活動を自粛した。次の早大戦以降は、一部を除いた4年生が復帰。だが、厳しい戦いが続き、勝ち点1の5位でシーズンを終えている。

 調査委員会の報告を受けて昨年12月22日に「今後の対応」が示された。前監督の契約解除、前部長はすでに辞表が提出されていたが、再発防止策の策定、遂行等の整理がなされた段階をもって受理された。当該部員に対しての教育的指導。大学におけるマネジメント問題への対応整備、再発防止策が行われた。

不祥事を経て大変革


 活動再開は年が明けた1月21日だった。木村新監督以下、学生たちは今後の野球部の方針についてミーティングを重ねた。大変革である。主将・田中祥都(4年・仙台育英高)は「信頼を取り戻す行動をしたい」と決意し、チームスローガンを「結束」とした。学校生活、寮生活の安定、そして地域清掃など、野球以前の取り組みに着手した。ゼロからの再出発。勝負のステージに立つ大前提として、大学生としての取り組みを抜本的に見直した。

「僕たちの言動が、今後の立教大学野球部の基準になっていくと自覚しています。新生・立教の伝統を築いていきたいと思います」

 シーズン前に主将・田中は誓った。春の開幕以降、立大の雰囲気はガラリと変わった。主務・遠山夏澄(4年・駒場高)は「スタンドで観戦している方に『気持ちの良い大学』『応援したくなるチーム』と思っていただけるような行動に努めていきたい」と語っていたが、見ている者を熱くさせるプレーを体現。勝利に直結はしなかったが、大きな一歩を示したと言える。今こそ我慢のとき。「即効性」に越したことはないが、再建に近道はない。

 慶大4回戦後、今春から神宮で指揮を執る木村監督は言った。

「(慶大戦を)この4つ、戦わせてもらって、一戦一戦、選手は成長している。ベンチの雰囲気を含めて、最高のゲームができたが、勝ちに結びつけることができず、選手には勝ち点を挙げられなくて、申し訳ない」

 慶大4回戦は水曜日。中2日の土曜日(5月11日)には、第5週の明大1回戦が控える。第7週は東大戦。リーグ優勝の可能性は消滅したが、対抗戦は続く。モチベーションが下がることもない。合言葉であるチームスローガン「結束」の下、残り2カードで勝ち点を奪取し「新生・立教」の意地を見せつける。

文=岡本朋祐
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング