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「二軍の帝王」から脱却できるか 細川成也に匹敵するDeNAの逸材に覚醒の予感が

 

打撃で強烈にアピール


今年こそ、一軍定着のチャンスをつかみたい蝦名


 5年ぶりにDeNAのユニフォームを着た筒香嘉智が復帰初戦となった5月6日のヤクルト戦(横浜)。2点ビハインドの8回二死一、二塁の場面で右中間に決勝打となる逆転3ランを放ったが、反撃の口火を切ったのが打撃好調の蝦名達夫だった。一死から左中間二塁打で出塁。鮮やかな逆転勝利の試合後は充実の表情を浮かべていた。

 筒香が復帰したことは大きなプラスアルファだが、若手が台頭してこなければV奪回は望めない。今季はドラフト1位の度会隆輝が開幕からスタメン起用されていたが、打撃が下降線をたどりレギュラーが確約されているわけではない。チャンスメーカーとして期待される桑原将志も打率.222と本来の状態ではなく、関根大気も好不調の波が激しいことがネックになっている。

 そこで外野の定位置獲りへ、強烈に存在をアピールしているのが蝦名だ。今季は開幕二軍スタートだったが、途中出場した4月29日の中日戦(バンテリン)で2打数2安打をマーク。翌30日の同戦も2試合連続マルチ安打を放つと、5月1日の3戦目は自身初の4安打と大暴れだ。初回無死一塁で涌井秀章から中前打を放ち、打者が一巡して再び回ってきた二死一、二塁でも右前適時打。二番で打線の火付け役となり、3回一死一、三塁の好機でも左前適時打。5回一死でも左前打と打ち出の小槌状態に。3試合計8安打の固め打ちで、早くも昨季の通算6安打を超えた。

二軍の帝王で終わらないために


 昨年に現役ドラフトで中日へ移籍した細川成也が長距離砲としての素質を開花させたが、蝦名もファームでは格の違いを見せていた。昨季はイースタン・リーグで39試合出場し、打率.322、4本塁打、27打点をマーク。パワーと俊足を兼ね備えた右の強打者だが、一軍では本来の力を発揮できない。42試合出場で打率.140、0本塁打。外野の守備面でも不安を露呈し、一軍に定着できなかった。

 スポーツ紙記者は「細川成也に匹敵する好素材だと思います。実際に他球団からの評価が高い。ただそろそろ殻を破らないと二軍の帝王で終わってしまう。そういう選手はプロ野球の世界では珍しくない。一軍でレギュラーを取るためには強いインパクトを残す活躍を見せてほしいですよね」と期待を込めていた。

 今季はイースタン・リーグで18試合出場して打率.263、1本塁打。際立った成績ではないが、打席内容を見ると成長の跡が見られる。選球眼に磨きをかけて出塁率.447をマーク。8盗塁と次の塁を積極果敢に狙っていた。DeNAは牧秀悟佐野恵太宮崎敏郎、復帰した筒香とポイントゲッターはたくさんいるが、機動力と出塁率の高さが武器の選手は少ない。外野のレギュラーをつかむためには何をするべきか。思い切りの良さを残しつつも打席での粘り強さが目立つ蝦名は目指すスタイルを見出したように感じる。

DeNAの野球を変革する存在


 打線は水ものだ。プロ野球OBの堀内恒夫氏はDeNAの課題について、昨年11月に週刊ベースボールのコラムで以下のように指摘していた。

「就任3年目を迎えた三浦大輔監督とDeNAの野球が『覚醒するのではないか?』と、俺は大いに期待していた。投手力と守りを重視する野球に加えて、ヒットエンドランとか、小技や足を絡めた作戦を実行するようになっていたからね。シーズンが開幕して5月ごろまでは快調な滑り出しを見せていた。ところが、ちょっと負けが込んできた6月ごろになると、また元の大味な野球へ戻ってしまった」

「三浦監督は自ら目指す野球を続ける信念がなかったのか。スランプを脱した打線に再び火がつくと、攻撃力に頼り切った昔からの『打てば勝つけれど、打てなければ負ける!』野球に逆戻りしてしまった。『伝統的回帰現象!』とでもいうのかね。とにかく、来季からのDeNAは『調子の悪いときにも勝てる野球!』を目指さなくてはいけない。低きに流れることはもう御免だ」

 蝦名はDeNAの野球を変革する核弾頭になれるか。今後もダイヤモンドを疾走する活躍に期待したい。

写真=BBM
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