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首都大学リポート

1回戦の先発をすべて任された筑波大・一井日向汰 ドラフト候補との投げ合いに敗れるも見せた成長【首都大学リポート】

 

投球の幅を広げた球速アップ


筑波大の左腕・一井は4年春にしてリーグ戦初勝利。3年間の努力が実った


【5月18日】首都大学一部リーグ戦
日体大3-1筑波大(日体大1勝)

 首都大学リーグ第7週1日目。筑波大は開幕から第3週までは1勝4敗と苦しんだ。だが、第5週は東海大、第6週は城西大から勝ち点を挙げて一部残留を決めた。

 先発の柱として今春は1回戦の先発をすべて任されてきたのが左腕・一井日向汰(4年・武蔵野北高)だ。

 高校時代は3年夏、コロナ禍で甲子園出場をかけた地方大会は中止。東京都高野連主催の西東京大会は2回戦で敗退した。

「強豪私立に入れるような結果は残せなかったので、強い国立大で野球を続けたいと思いました」。筑波大には一般受験で入学。現在は工学システム学類で学んでいる。

「体育学群の動作解析ように野球に直接つながる研究はしていませんが、欲しい結果を得るため論理的に実験を進めていくことは野球にも応用ができて、キャッチボールのときに足の上げ方を変えてボールがどう変わるのかなどを試したりしています」

 2年春にリーグ戦デビュー。同年秋の新人戦では獨協大を相手にノーヒットノーランの快投を演じた。だが、3年生となった翌年も「1年間、活躍できませんでした。あのときは『練習は間違っていない』と感じていましたが、今、振り返るともっとできることがあったと思います」とリーグ戦では思うような結果を残すことができず。そこで、この冬は体作りから始めたという。「走り込みをして基礎体力や投げるためのスタミナをつけ、ウエイトトレーニングでは体重を72キロから78キロまで増やしたのですが、そのおかげで球速も上がってMAX140キロになりました」。

 球速アップがピッチングの幅を広げた。

「ストレートは上からしっかりとたたくイメージでスピンをかけているのですが、ストレートが強くなって得意のカットボールも生きるようになりました」

 コントロールについても「スリーボールになってから粘れるようになり、長いイニングを投げさせてもらえるようになりました」とリーグ戦での経験を重ねるなかで自信を深めた。

 第4週の城西大1回戦では7回を2安打無失点の好投でリーグ戦初勝利を挙げた。

「城西大は長打があるので投げミスをしないように気を付けていたのですが、真っすぐとスライダーのコンビネーションで抑えることができました」

「秋はリーグ優勝したい」


 そして、この日の日体大1回戦ではドラフト候補右腕・寺西成騎(4年・星稜高)とマッチアップ。「良いピッチャーだと分かっているので少し意識しましたが、自分が対戦するのは日体大のバッターなので、無駄な失点をせずに流れを持ってこられるようなピッチングを心掛けていました」。

 普段どおりの気持ちでマウンドに上がった一井は「ストレートがバラついていたのですがチェンジアップを有効に使って組み立てることができました」と5回まで無失点。川村卓監督も「これまでは思いどおりのボールが投げられないと四球やヒットを打たれていたのですが、粘り強くエースらしいピッチングをしてくれました」と成長を認めている。しかし、6回表に不運な安打をきっかけに1点を失うと、7回途中で降板。チームも1対3で敗れ、黒星を喫した。

 今シーズンを振り返って「イニングの先頭打者やピンチになりそうな場面などは集中し、締めるべきところをしっかりと締める。そういう試合のなかでのメリハリだったり、ギアを変える感覚をつかむことができました。開幕当初は4回を投げるのが精一杯でしたが、今は自分の力で試合が作れるようになったと感じています」と手応えを語っている。

 来季に向け「夏にもう一度、トレーニングをして体力を付けたい。1戦目の先発は相手チームのエースと投げ合うことになりますが、白星を挙げるためにもう一段階レベルを上げて、秋はリーグ優勝したいです」と抱負を語った。国本航河(3年・名古屋高)が戦線を離脱し、苦しい投手事情のなかでエースの立場を確立した左腕はさらなる成長を誓っている。

文&写真=大平明
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