不調に陥る主力選手
6月8日の西武戦ではビーズリー[右]が1失点完投勝利。岡田監督も笑みを浮かべた
長いペナントレースは思い描いたとおりに事が運ばない。ただ、ここまで誤算が相次ぐとは思わなかっただろう。
阪神は
大山悠輔、
シェルドン・ノイジー、
青柳晃洋、ハビー・ゲラと主力選手たちが不調によりファームで調整している。
新外国人のゲラは150キロ中盤の直球とキレ味鋭いスライダーを武器に、3、4月は14試合登板で0勝1敗5セーブ7ホールドをマーク。元野手でフィールディング、牽制の技術も高い。ブルペンの中心で稼働していたが、5月に入ると制球が甘くなり痛打を浴びる場面が目立つように。5月26日の
巨人戦(甲子園)で
岡本和真に9回同点ソロを被弾すると、31日の
ロッテ戦(ZOZOマリン)も9回一死満塁で
高部瑛斗に左犠飛で同点に追いつかれた。6月4日の
楽天戦(甲子園)でも同点の延長10回に登板し、2本の適時打を浴びて3敗目。ファーム降格が決まった。
青柳は昨年8勝6敗、防御率4.57と悔しい結果に終わった。2021、22年と2年連続最多勝に輝いた青柳はエース復権を目指し、今季は2年連続開幕投手を務めたが、制球に苦しみ本来のリズムで投げられない登板が続く。8試合登板で1勝3敗、防御率3.83。6月1日から3度目のファーム調整となった。
投手陣は質、量共に12球団トップラスを誇る。青柳、ゲラの穴を埋める人材がそろっているが、もっとも大きな誤算が大山の深刻な打撃不振だ。昨季は全143試合出場で四番を務めて最多出塁率(.403)のタイトルを獲得したが、今季は打率.199、3本塁打、19打点と不調から抜け出せない。6月5日にファーム降格が決まり、実戦に出場せず打撃フォームの見直し、心身のコンディション調整に専念している。昨季のCS、日本シリーズで勝負強さを発揮したノイジーも打率.244、1本塁打、8打点、得点圏打率.125と振るわず5月27日に登録抹消。
佐藤輝明も攻守に精彩を欠き、5月15日から約3週間ファームで汗を流し、6月7日に一軍昇格した。
今がどん底と考えれば……
大山、佐藤輝、ノイジーと中軸を担わなければいけない選手たちが不在の状況で、
岡田彰布監督も打線の組み立てに苦慮する。本来はリードオフマンの
近本光司を四番に据え、一番・
中野拓夢、二番・
前川右京でチャンスメークするオーダーに。最大7あった貯金は交流戦で3勝7敗と苦戦して2に。それでも、スポーツ紙記者は「阪神が優勝争いの本命であることは変わらない」と強調する。
「これだけ主力が稼働しなければ借金が2ケタ近くいっても不思議はないのに、首位争いできる位置に踏みとどまっている。今がどん底と考えればあとは上がるだけ。巨人、
広島と比べて投手陣の層の厚さ、安定感を考えると阪神が上です。もちろん、息を吹き返して貯金を積み重ねるには佐藤輝、大山の復活が不可欠です。交流戦を5割近くまで盛り返せば、御の字でしょう」
チームを率いる指揮官の自信
岡田監督は週刊ベースボールのコラムで、今後の戦いの展望に言及している。
「ここまで守りの野球(投手力)で戦ってきた。援護がない中、とにかく投手陣が踏ん張ってきた。バランスの悪い戦いを続けながら、貯金を少しずつ増やしてきた。チーム状態がどん底でいながら、まだ貯金がある。よくもまあ、これで貯金があるもんだ。ホンマに不思議な感覚やけど、やはり勝率5割ラインは保っていかねばならない。いまは順位のことを考えてはいないし、1位から3位になっても(6月1日現在)、まったく気にしていない。それよりも、まずチームを正常な状態に戻すこと。ここに注力するだけのことよ」
「このコラムを書いている先、交流戦の最後は
オリックス、
ソフトバンクとのゲームが待っている。
日本ハム、ロッテという現状、パ・リーグで最も勢いのある2チームにはやられたが、もちろん、このまま終わるわけにはいかない。セ・リーグはパ・リーグと違い、6チームが入り乱れ、混戦、団子状態である。いま、どこも抜け出すことができない。そういう状態だからこそ、5割の基本ベースに、必ず立て直していく。ポジティブに考えるのではなく、いまのチーム状態を冷静に見つめ、それに即応した戦略、戦術を打っていく。必ず底は抜ける。そのために、やることはやる。ベンチも、選手も……。ファンの皆さんもやきもきしていることだと思いますが、必ず立て直すことができると思っています。それを見ていてください」
6月8日の西武戦(甲子園)で4対1と快勝し、交流戦初のカード勝ち越しを決めた。同一カード3連勝、さらに大型連勝で上昇気流に乗れるか。
写真=BBM