昨年から投手に専念
一軍へ上がるためにファームで腕を振っている根尾
中日の先発で当確と言えるのは
小笠原慎之介、
高橋宏斗ぐらいだろう。
柳裕也、
大野雄大はファームで調整中。
梅津晃大、
涌井秀章、
松葉貴大がローテーションに入っているが、他の投手もファームで結果を残せば、一軍でチャンスをつかむ可能性が十分にある。炎天下のファームで必死にアピールしているのが、
根尾昂だ。
7月5日のウエスタン・
オリックス戦(杉本商事BS舞洲)で6回3安打8奪三振1失点。初回にいきなり連打を浴び、無死一、三塁から犠飛で先制を許したが、その後のピンチを切り抜けた。2回以降は危なげない投球で、課題の制球力も2四球にとどめてまとまっていた。
遊撃で入団し、外野へのコンバートを経て、2022年のシーズン途中に投手と野手の二刀流に。昨年から投手に専念した。今年は先発ローテーション入りを狙ったが、開幕をファームで迎えて5月5日に救援要員で一軍昇格。だが、16日の
阪神戦(バンテリン)で6回からマウンドに上がると一死一、二塁のピンチを招き
原口文仁に3ランを被弾。直球で空振りが取れないため、スライダーとフォークが生きてこない。再びファームで出直すこととなった。
高めたいフォームの再現性
ウエスタン・リーグでは9試合の先発登板で4勝2敗、防御率3.13。一軍に昇格するためには、結果だけでなく投球内容も求められる。6月7日のウエスタン・阪神戦(鳴尾浜)は5回3安打1失点も7四球と制球が定まらない。最少失点に抑えた修正能力は評価できるが、四球が多いと守備のテンポも悪くなる。制球力の改善がカギを握ることは間違いない。
他球団のスコアラーは、現在の根尾についてこう分析する。
「良い球を投げているのであとは再現性ですよね。これは根尾に限らず他の投手にも言えますが、一軍に定着する投手は抜ける球が少ない。状態が悪くても自分の中で改善できる術を持っています。ファームの登板で四球が多いと、首脳陣も一軍に推薦するのを躊躇します。カウントを不利にして甘い球を投げると一軍の打者は確実にとらえてきますから。直球は力強さを取り戻しているように見えます。素材は間違いなくいいので、何かきっかけをつかめば一軍で白星を重ねられると思います」
一軍戦力になる同世代
野手で大成を期待されただけに、投手転向から2年が経とうとする現在も賛否両論の声が上がる。だが、根尾自身は気持ちを切り替えていた。昨年1月に週刊ベースボールの取材で胸中を語っている。
「ピッチャーになってからは早くグラウンドに出たいって思っています。うまくいかないときは考えちゃうんです。練習をしっかりやったあとでも、寮にいて時間だけたくさんあるときとか。そんな時間に『悩んでいても楽しくない』と気づかされました。明るく、前向きにやったほうが、同じことをやるのにもパフォーマンスは違うと思います。そういう意味では吹っ切れたというか、はい、そんな感じです」
「1年間は野手で勝負することを開幕前から監督とは話していました。そこからこの1年、野手としてやるよりも、早く交流戦のあの時点で投手転向したほうがいいのではないかという話をさせていただいて、話し合った上で決まったので『よし、やるか』という感じでした」
高卒6年目。24歳は期待の若手という枠ではない。ドラフトで同期入団の選手たちを見渡すと、
戸郷翔征(
巨人)はエースへの階段を駆け上がり、
小園海斗(
広島)は攻守で不可欠な存在に。
日本ハムは昨年の
万波中正に続き、
田宮裕涼、現役ドラフトで
ソフトバンクから移籍した
水谷瞬がブレークの瞬間を迎えている。度重なる故障も影響して伸び悩んでいた
太田椋(オリックス)も今季はクリーンアップに定着している。
大阪桐蔭高で3度の全国制覇を達成するなど、アマチュア時代は投手と野手の二刀流で世代のトップランナーとして活躍した根尾だが、プロは結果がすべてだ。投手としてプロの道で生きる――。自身の決断が正しかったことを証明するには、一軍のマウンドで結果を出すしかない。
写真=BBM