器用で高い対応力
身にまとうソフトバンクのユニフォームに違和感がなくなってきた。5月12日に巨人からトレード移籍した
秋広優人だ。15日の
西武戦(みずほPayPay)から「六番・左翼」で7試合連続出場。打率.250、0本塁打と際立った数字を残しているわけではないが、出塁率.348は合格点をつけられる。
昨年に圧倒的な強さで4年ぶりのV奪回を飾ったソフトバンクは、各ポジションでハイレベルな定位置争いが繰り広げられている。その中で、ウエスタン・リーグで5年連続本塁打王に輝いた
リチャードをトレードで放出し、秋広を獲得したことは期待の大きさの表れだ。球団関係者は「身体能力の高さがフォーカスされますが、器用で対応能力が高い。秋広は長打力だけでなく、コンタクト能力や出塁率が求められます。お手本になる選手が多いので参考にしながら、自分の良さを出してほしいですね」と期待を込める。
心の準備と体の準備

ベテランとしてチームで存在感を発揮する中村
ソフトバンクを象徴する選手の一人が、黄金時代を支えた
中村晃だ。2014年に176安打で最多安打のタイトルを獲得するなど巧打者として活躍。
山川穂高がFA移籍で加入した昨年はスタメンでの出場機会が激減し、打率.221、0本塁打と悔しい結果に終わったが、今年は巻き返しに向けて期する思いが強い。今年は春先から
近藤健介、
柳田悠岐、
今宮健太と主力に故障者が続出。山川も打撃不振に陥る苦しいチーム状況で、5月中旬以降に四番に抜擢され、41試合出場で打率.285、1本塁打、9打点と奮闘している。
守備での貢献度も高い。一塁で20年からゴールデン・グラブ賞を4年連続受賞したが、チーム事情で外野を守ることも。中村は23年に週刊ベースボールのインタビューで、自身が大事にしていること、強みを聞かれると以下のように答えている。
「やっぱり準備じゃないですか。心の準備と体の準備。どこを守るにしても、試合前の準備を怠らない。しっかり打球を受けて、ノックを打ってもらって、『さあ、行ける』という状況を、安心材料をたくさんつくって臨むこと、じゃないですかね。やっぱり不安なまま行くと、どうしても悪い結果が出ると思う。あとはもう、これまで1300試合以上出ているので、『自分自身のプレーをすれば大丈夫だ』というふうに思ってやるようにはしています」
「強み……どうなんですかね。やってきたことは消えない。経験しかないですね。あとは、グラウンドに立ってしまえば、もう1年目も16年目も変わらないので。経験を生かした感覚というところは、強みじゃないかと思います」
新天地での大化けへ
中村は身長175センチと体格に恵まれているわけではない。秋広は身長2メートルの長身でプレースタイルは異なるかもしれないが、プロで18年間のキャリアを駆け抜けてきたベテランと一緒にプレーすることで得られるものは多いだろう。
現役時代に安打製造機として活躍した
内川聖一氏も、横浜(現
DeNA)からソフトバンクにFA移籍したことで、選手として大きく成長した。史上2人目となるセ・パ両リーグで首位打者に輝き、4度のリーグ優勝、5度の日本一に大きく貢献した。「先輩方の小久保(
小久保裕紀)さん、松中(
松中信彦)さんらがいて、僕らは伸び伸びやらせてもらった。その環境がすごくありがたかったですね。1学年上にムネ(
川崎宗則)さんがいて明るく迎えてくれたことも助かりました。後輩も僕の1個下にマッチ(
松田宣浩)、2学年下にハセ(
長谷川勇也)、本多(
本多雄一)がいて。あのときの年齢層にうまく入っていけた。FA権を行使した理由の一つに、違う球団がどういう野球をしているのか見たかったというのがありました。ホークスの野球を吸収しなきゃいけないという気持ちと、結果がうまくリンクしたと思います」と振り返っている。
秋広は23年に121試合出場で打率.273、10本塁打、41打点と頭角を現したが、昨年は26試合出場にとどまり、今年も5試合出場と一軍定着できずにトレードで新たな環境に移籍することになった。目指す未来は23年の輝きを取り戻すのではなく、ソフトバンクのレギュラーとして活躍することだ。22歳の若武者は新天地で大化けする可能性を秘めている。
写真=BBM