3試合連続無失点も……

今季で7年を迎えた根尾
もう一度、一軍のマウンドへ。ファームで巻き返しを誓うのが
中日の
根尾昂だ。
救援で勝負することになった今年は開幕二軍スタートだったが、ウエスタン・リーグで10試合に投げ、1勝0敗、防御率0.00と結果を残した。状態の良いときばかりではなかったが、走者を背負っても点を与えない。大人になった投球が成長の証しだった。5月1日に一軍昇格すると、3試合連続無失点。5月6日の
DeNA戦(バンテリン)に登板した際は自己最速の155キロを計測した。
好投を続ければ勝負どころで起用される期待が高まったが、中13日でマウンドに上がった20日のDeNA戦(横浜)で、痛打を浴びた。4点ビハインドの2回一死一、三塁で登板し、
牧秀悟を142キロのフォークで空振り三振、
度会隆輝を150キロの直球で一ゴロに仕留めてピンチを切り抜けたが、3回に
タイラー・オースティンにソロを浴びるなど2失点。4回も
宮崎敏郎に3ランを浴びた。2回2/3を5失点とDeNA打線の勢いに飲み込まれて防御率7.94に悪化。ファームで再調整が決まった。
収穫と課題が明確に
一軍で登板した4試合で、収穫と課題が明確になっただろう。根尾は球種の多い投手ではない。直球、スライダー、フォークの3種類で打者に対峙する。一時は球速が出なかった直球だが、投球フォームが固まった今年は常時150キロ前後のキレのある直球を投げ込めている。スライダー、フォークもきっちり決まれば打たれない。課題はその精度を磨くことに尽きる。ファームでは少々甘く入っても打たれないが、一軍の強打者は失投をきっちり捉えてくる。制球力を磨きながら、ストライクゾーンで抑え込む直球の力強さを追い求めることで、さらに投手として成長できる。
井上一樹監督だけでなく、
浅尾拓也一軍投手コーチも根尾にはい上がってほしい思いが強いだろう。中日ファンとすれば、根尾が浅尾コーチのように絶対的リリーバーとして活躍してほしい思いが強い。現役時代は最速157キロの直球と140キロ近い高速フォーク、縦に曲がるスライダーを武器にセットアッパーとして活躍。リーグ連覇を飾った2010、11年の輝きは強烈だった。

2011年にはリリーフながらMVPに輝いた浅尾
10年は21試合連続ホールドポイントの新記録を樹立するなど、72試合登板で12勝3敗1セーブ、NPB最多記録の47ホールド、防御率1.68をマーク。11年もリーグ最多の79試合に登板し、7勝2敗10セーブ45ホールド、防御率0.41。2年連続最優秀中継ぎ投手を受賞し、救援では異例のリーグMVPに選出された。高2まで野手という異色の経歴でフィールディング能力に自信があることも、プラスに働いた。先発登板が一度もない投手として史上初のゴールデン・グラブを獲得した。
ポイントは「7回の男」
登板過多の影響があったのか、30歳を超えると右肩のコンディション不良に悩み、現役生活は12年間と決して長くなかったが、
落合博満監督の下で不可欠な投手として黄金時代を支え、中日ファンを熱狂させた右腕だった。浅尾コーチは印象に残る試合について、「一番、というのはないんですが、もちろん初登板も心に残っていますし、初勝利も鮮明に残っている。開幕投手もやらせてもらい、胴上げ投手にもなった。幸せな野球人生を最初は過ごせたと思います」と振り返り、「個人の記録は自分の中でそんなに……。うれしいんですが、それよりチームが優勝して、2連覇して、ビールかけができたのがホントに楽しかったです。もう一回、その楽しさをみんなで味わってほしいと、今後も思い続けると思います」とナイン、首脳陣、スタッフとみんなで喜んだリーグ連覇を良き思い出として挙げていた。
中日は絶対的守護神の
ライデル・マルティネスが昨オフに
巨人に移籍したが、
松山晋也が21試合登板で17セーブをマーク。セットアッパーの
清水達也もリーグ3位の13ホールドを挙げている。ポイントは清水、松山につなげる「7回の男」だ。
ジュニオル・マルテ、
勝野昌慶、
藤嶋健人、
橋本侑樹が有力候補になるが、根尾が割って入れるか。救援陣の戦力を底上げするためにも、一軍のマウンドで輝く姿を見たい。
写真=BBM